「天津飯には大小関係なくかめはめ波が効かない」――ドラゴンボールファンの間で語り草となっているこの話をご存知でしょうか。第22回天下一武道会での孫悟空と天津飯の初対決時、亀仙人(ジャッキー・チュン)の口から出たこのセリフは、今ではちょっとしたネタとして扱われることもあります。事実、当時の亀仙人の発言を真に受ければ「天津飯ならセルの太陽系破壊かめはめ波すら無効化できたのでは?」といったネタが生まれてしまうほどです。
もちろん、作中の戦闘力インフレを踏まえれば天津飯がセルの放つ超巨大かめはめ波を防げるはずはないと分かります。しかしそれでも、なぜあの時点で亀仙人は「大小関係なく効かん」と言い切ったのか?という点は興味深いテーマです。
本記事では、原作漫画の描写を主軸に、この「天津飯にかめはめ波が効かない」という現象を多角的に読み解いてみます。
他の考察記事やファンの議論も参照しつつ、技術的な観点、ストーリー演出上の意図、そして後のシリーズへの影響など、様々な切り口から深堀りし、真面目に考察していきたいと思います。
原作での描写を振り返る – 天津飯VSエネルギー波の場面集
まずは問題の「かめはめ波が効かない」という設定が示された原作シーンを整理します。
天津飯がかめはめ波のようなエネルギー波を無効化・拒絶した場面は、漫画『ドラゴンボール』において主に以下のように描かれています。
第22回天下一武道会・ヤムチャ戦(かめはめ波を跳ね返す)
天津飯の初登場となった第22回天下一武道会。準々決勝でヤムチャと対戦した天津飯は、ヤムチャが放ったかめはめ波を真正面から受け止め、気合い(気功)で押し返す離れ業を見せました。

あの亀仙流伝家の宝刀であるかめはめ波を、天津飯はわずかな気の放出でかき消してしまったのです。
この衝撃的な描写に観客だけでなく読者も驚かされました。
実際、このシーンは「天津飯、かめはめ波を気合で跳ね返す」というインパクトある出来事として語り継がれています。
第22回天下一武道会・孫悟空戦(亀仙人の発言)
ヤムチャ戦で天津飯の実力を思い知った亀仙人は、自身も参加していた武道会を途中棄権し観客に回ります。そして決勝の悟空VS天津飯を見守る中で、クリリンの「悟空ならもっと強いかめはめ波を撃つかも」という趣旨の発言に対し、こう言い切りました。
「あの天津飯というやつ、かめはめ波そのものがきかんのじゃ。大小に関係なくな…」
これが例の「大小関係なく効かない」の由来となるセリフです。
悟空の師であり達人である亀仙人が太鼓判を押す形で、天津飯の“かめはめ波無効”ぶりが強調された瞬間でした。
なにより亀仙人のセリフだけではなく、当の天津飯自身が自分には「かめはめ波はまったく通用しない」と言い切っているのです。

天津飯はこの時の悟空の強さを知っていたから、ある程度かめはめ波の威力も推測できたというのもあるとは思いますが、それでも、どれくらいの威力のかめはめ波を放ってくるか、ここまで確信をもっていえるものでしょうか?
この天津飯の不自然なまでの自信が、亀仙人のセリフとも相まって、「天津飯にはかめはめ波が大小関係なく効かない」説を補強していると考えられます。
第23回天下一武道会・サイボーグ桃白白戦(スーパーどどん波を無効化)
天津飯の“気功波無効”描写は何もかめはめ波に限った話ではありません。翌第23回天下一武道会の天津飯対サイボーグ桃白白戦において、桃白白(桃白白は鶴仙人の弟子にして殺し屋、天津飯の元同門でもあります)が放った「スーパーどどん波」を、天津飯はこれまた真正面からかき消しています。

どどん波は鶴仙流の必殺技で、かめはめ波と並ぶ当時の代表的なエネルギー波です。
それすらも通じないとなれば、「天津飯は気功波全般を無効化できるのではないか」とすら思わせる描写でした。ヤムチャ戦・桃白白戦を通じ、天津飯はエネルギー波を受けてもびくともしない稀有な戦士として描かれたのです。
サイヤ人編(ナッパ戦)以降
原作のその後の展開では、天津飯が再びかめはめ波系の技を受け止める場面は直接的には描かれていません。サイヤ人襲来時の戦いでは、天津飯は圧倒的実力差のあるナッパに挑み、エネルギー波どうこう以前に片腕をもがれ瀕死の重傷を負ってしまいます。

ここではナッパが放ったエネルギー弾を天津飯がかき消そうとするといった描写はなく、むしろ天津飯自身が渾身の【気功砲】で応戦するも力及ばず…という展開でした(ナッパの一撃に対しては孫悟空が間一髪でかめはめ波を撃ち消していますが、天津飯には防ぐ余裕すらなかったと言えるでしょう)。
そのまま天津飯は力尽きてしまうため、サイヤ人編では「天津飯vsかめはめ波」が実現する機会はありませんでした。
セルゲーム(セル戦)
セルゲームの局面でも、天津飯とかめはめ波の直接対決は起きていません。完全体セルが放つ凄まじいかめはめ波に対し、天津飯たちが自身の無力さに絶望する立場でした。
この描写からは、結局のところセルの放つ規格外のエネルギー波には天津飯といえども、無効化することはできなさそうということが推測できます。
ただしセル編では、天津飯は新気功砲を連発して第二形態セルの動きを一時的に封じる大健闘を見せています。この 「格上の敵を気で押さえ込む」 描写は、形は違えど天津飯の気の扱いの巧みさを示すエピソードと言えるでしょう。
魔人ブウ編(デンデ救出の場面)
原作最終盤の魔人ブウ編でも、天津飯がわずかながら見せ場を作っています。魔人ブウ(純粋)が神龍を復活させるためにデンデを殺そうと放ったエネルギー弾に対し、突如現れた天津飯が気功砲でそれをはじき飛ばし、デンデを救いました。
結果的に天津飯自身もすぐにブウに倒されてしまいますが、この場面でも「天津飯は不意打ちのエネルギー弾を咄嗟に相殺できる実力者」であることが示唆されています。
ブウの放った気弾を完全に無効化したわけではないにせよ軌道を逸らすことに成功しており、界王神が見せた気合砲(目線で放つ見えないエネルギー)の威力にも匹敵すると評価する声もあります。
以上が原作漫画で描かれた天津飯VSエネルギー波の主なシーンです。特に初登場時のヤムチャ戦と悟空戦での描写が「かめはめ波無効の男・天津飯」というキャラクターイメージを決定づけたと言えるでしょう。
その後の物語では天津飯が直接かめはめ波を受け止める場面は訪れませんでしたが、ファンの記憶には強烈に残る設定となりました。
技術的観点から考える「気合いでかき消す」テクニック
では、天津飯はなぜかめはめ波をはじめとする気功波を無効化できたのでしょうか。その技術的・バトル理論的な観点を探ってみます。
結論から言えば、天津飯がかめはめ波に「効かない」のは超常的な体質や魔法の能力ではなく、彼自身の高い気のコントロールテクニックが他のキャラクターと比較しても高いのかもしれません。
ヤムチャ戦で天津飯が見せたのは、いわゆる「気合い(闘気)による相殺」でした。
自身の気を瞬間的に解放することで、飛んできたかめはめ波のエネルギーを押し返したりかき消したりしたわけです。
もちろん、これはドラゴンボール世界の戦闘理論に照らせば、それほど不思議な現象ではありません。後のエピソードを見ても、例えば悟空がサイヤ人編でナッパの放ったエネルギー弾をかき消してみたり、界王神が魔人ブウの気弾を睨みつけるようにして爆発させたりと、気の強い戦士が格下の気功波を打ち消す描写は珍しくないからです。
しかく、天津飯の能力として特筆すべきなのは、その気合いで相殺を初登場時点で既に実践していた点でしょう。
当時の天津飯は少年期の悟空と同等、クリリンたちより一段上の実力者でしたが、界王星で修行した悟空や界王神などと比べれば、はるかに弱い存在です。その彼が、亀仙流の奥義であるかめはめ波をよけるでもなく、どどん波で相殺ではなく、気合で跳ね返した点に亀仙人も驚愕したのです。
亀仙人も「あの天津飯というやつ、かめはめ波そのものがきかん」と断言した背景には、「単に天津飯の肉体が頑丈」といった意味ではなく「天津飯はかめはめ波をも見切った上で無力化できる達人である」という評価があったのでしょう。
さらに天津飯には、この「見えない気による攻撃/防御」の延長線上にある必殺技が存在します。そう、「気功砲(きこうほう)」です。
【気功砲】は天津飯が鶴仙人から教わった究極の気功技で、自身の命を削るほどの莫大な気を放出して一点を攻撃するものです。発射時に光線は見えず、着弾点で爆発的な破壊力を生むこの技は、ある意味で“究極の気合砲”とも言えます。
亀仙人が「あの天津飯には大小関係なくかめはめ波は効かん」と評した裏には、「天津飯はあの気功砲すら使いこなす男だ。中途半端なかめはめ波では対抗できない」という洞察があったのではないでしょうか。
実際、天津飯が気功砲すらも使えることに驚いていた描写があります。鶴仙人が天津飯に「教えてはならん技」と憤りつつも、そもそも教えたからと言って、そう簡単に習得できるものではないのでしょう。
とはいえ、気功砲は命を削る禁断の技ですから、天津飯が常にフルパワーの気功砲レベルで相手の技を相殺できるわけではありません。無効化できるエネルギー波の最大限度は、自身の出せる気の出力(=気功砲級の威力)までと考えるのが妥当でしょう。
言い換えれば、天津飯が相手の気功波をかき消せるかどうかは相手のエネルギーの強さ次第ということになります。実際、サイヤ人編のナッパ戦では天津飯の放った気功砲ですら致命傷を与えられず終わっていますし、そのナッパが放つような強力な爆発波を天津飯が防ぎきるのは難しかったでしょう。
その証拠に、セルゲーム時のセルのかめはめ波には、なにもできない自身の無力さに打ちひしがれている描写がありました。
とはいえ、天津飯は若くして舞空術や気功砲、四身の拳をはじめ多彩な技を使いこなし、悟空やクリリンにも影響を与えた天才的武道家でした。
そうした面を踏まえれば、「かめはめ波無効」も決してご都合主義の超設定ではなく、天津飯の戦闘センスを示すエピソードとして理解できるでしょう。
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