「だから滅びた……」ドラゴンボール史上最高の名言

サイヤ人
引用元 ドラゴンボール 集英社

名作と呼ばれるマンガには名言がつきものです。
有名なところではスラムダンクの「あきらめたらそこで試合終了ですよ……?」などがありますね。
名言をインターネットで調べたとこと、下記のように出てきました。

よく、ことの道理を言いあてたすぐれたことば。名高いことば。

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しかしことマンガの名言に限定すると、以下の二つを定義として考えている人が多いようです。

  • その言葉を聞くだけで作品名が思い浮かべられる
  • その言葉自体に普段の日常生活でも使えるような汎用的な意味を持っている

ではドラゴンボールにおける名言の中で最も印象に残っているものは?と聞かれたら、私は真っ先にフリーザ戦における悟空のセリフ「だから滅びた……」をあげます。
実際ドラゴンボールファンの間でも、この悟空のセリフをドラゴンボールの中で最も好きなセリフに挙げている人も多くいます。
しかし、このセリフは前述した名言の定義に合致しているかというと、微妙なところだったりします。
まず「だから滅びた……」というフレーズを聞いて、ドラゴンボールを思い浮かべられる人というのは、かなりのドラゴンボールファンでしょう。
その原因は、このセリフが前後の文脈を把握していないと、その意図を理解しにくいからなのではないかと思われます。
つまり、名言の定義のひとつとしてあげた「その言葉自体に普段の日常生活でも使えるような汎用的な意味を持っている」に合致していないのです。

しかし、それでもこのセリフを私がドラゴンボールの中でも最高の名言としてあげるのは、ドラゴンボールのフリーザ戦にいたるまでのストーリー展開やサイヤ人の過去を理解した上でこのセリフを読むと、その裏に隠された深い意味に思わずうならされるからです。
まさに「ことの道理を言いあてたすぐれたことば。」という辞書に記載された名言の定義そものだといえるのです。

この記事では、この「だから滅びた……」というドラゴンボール最高の名言の名言たるゆえん、その理由について詳細に解説していきたいと思います。

「だから滅びた……」の意味を理解できない人はアスペ?

某インターネット掲示板に、世の中にはドラゴンボールのストーリーを読んでいても、この「だから滅びた……」というセリフの意味を理解できない人がいるというスレッドがたったことがあります。

世の中には悟空がどういう意図でこのセリフを言ったのか理解できない人が一定数いるということのようなのですが、どういう意味なのでしょうか?
まず、このセリフの意味を正しく理解するには前後の文脈とストーリー背景を知る必要があります。

引用元 ドラゴンボール 集英社

このセリフはフリーザの「きさまらサイヤ人は罪のない者を殺さなかったとでもいうのか?」という問いに対しての悟空の返答でした。
この悟空の返答が「だから滅びた……」という簡潔なものであったため、「だから」という部分の解釈が、「サイヤ人は罪のない者を殺さなかったから」滅びたと「サイヤ人は罪のない者を殺していたから」滅びたという二通りに分かれてしまうようなのです。

ドラゴンボールをしっかりと呼んでいる方なら、サイヤ人がフリーザ軍と結託して過去に宇宙の星々を侵略して罪のない宇宙人たちをたくさん殺してきたという事は知っていると思います。
当然悟空もラディッツからその事実は聞かされていますので知っています。
ですので、「サイヤ人は罪のない者を殺さなかったから」ではなく、「サイヤ人は罪のない者を殺していたから」という解釈以外にはあえりないということになります。

そもそもフリーザの「きさまらサイヤ人は罪のない者を殺さなかったとでもいうのか?」という問いは、質問の体裁はとっていますが、これはあくまで修辞的なもので実際には反語といわれるものです。
つまり、「きさまらサイヤ人は罪のない者を殺さなかったとでもいうのか(殺してきただろう)?」という反対の意味が言外に含まれているのです。
でなければ、その直前の「えらそうなことをいいやがって……」というセリフと文脈がつながらなくなってしまいます。
フリーザもサイヤ人が自分たちと同じように罪のない者を殺してきたことを知っているからこそ、悟空の「罪もない者をつぎからつぎへと殺しやがって……」というセリフに対して「きさまらサイヤ人は罪のない者を殺さなかったとでもいうのか?」という反語で反論をしたのです。

引用元 ドラゴンボール 集英社

上記のことは常識的な国語力を持っている人ならば、ごく自然に理解できることだと思いますし、私自身リアルタイムでこのシーンを読んだのは中学生の頃でしたが、普通に理解していた記憶があります。
ですが、世の中にはこれを真逆の意味にとらえ、なぜ悟空が「だから滅びた……」と言ったのか意味がわからない人たちが一定数いるということのようですね。世の中広いですね。

因果応報 罪のない者を殺したものは滅ぼされる

ここからはさらに、「だから滅びた……」というセリフに隠された深い意味を考察していきます。
悟空とフリーザの一連の会話の流れを見ていきましょう。
やりとりはクリリンがフリーザによって殺され、悟空が怒りによってスーパーサイヤ人に覚醒するところから始まります。

引用元 ドラゴンボール 集英社

悟空「罪もない者をつぎからつぎへと殺しやがって……」「ク…クリリンまで…
悟空「オレはおこったぞー!!!フリーザーッ!!!!」で、フリーザにパンチを食らわす。
フリーザは地面に岩に激突するも、大きなダメージは受けていません。ゆっくりと悟空のいるところまで戻ります。
フリーザ「えらそうなことをいいやがって……」「きさまらサイヤ人は罪のない者を殺さなかったとでもいうのか?
悟空「だから滅びた……
フリーザ「オレが滅ぼしたんだ」「サイヤ人はなんとなく気に入らないんでね……
悟空「こんどはこのオレが貴様を滅ぼす

ここまでが一連の流れですね。「だから滅びた……」という名言の意味を正しく理解するためには、この一連の悟空とフリーザのやりとりの文脈を理解する必要があります。
フリーザの主張は、「罪のない者を殺した」とお前は俺に言うが、「お前たちサイヤ人も罪のない者を殺してきただろう?偉そうなことを言うな」ということです。
それに対しての悟空は「そうだ。お前の言う通りサイヤ人は罪のない者を殺してきたから滅んだんだ」と言っているのです。

さらにフリーザは「オレが滅ぼしたんだ」「サイヤ人はなんとなく気に入らないんでね……」と返していますが、このセリフにはどのような意味が込められているのでしょうか。
フリーザは「オレが滅ぼしたんだ」と倒置法を使って強調しています。
これはつまりサイヤ人が滅んだのは、そんな因果応報的な神の裁きのようなものではなく、「力のある俺が意思を持って滅ぼしたんだ」ということを言いたいのでしょう。
そのフリーザの反論に対して、悟空はさらに言い返します。
こんどはこのオレが貴様を滅ぼす
このセリフで悟空は「誰が滅ぼしたかは関係ない。罪のない者を殺した者はいずれ滅びる運命にある。そして今度はお前が滅びる番だ。」と言いたいのだと思います。

悟空とフリーザのこの一連のやり取りには、これだけの言外の意味が込められているのです。
そこにはお互いの意思のぶつかり合いがあり、それが直接的に言葉として書かれているわけではないからこそ、読者に対して深く訴えかけてくるものがあるのでしょう。

フリーザにも罪の意識がある?

上記については他のブログ記事やインターネット掲示板でも同じような考察がされていますので、特段目新しいものはありませんが、ここからはさらにフリーザの潜在意識について、分析、考察をしていきたいと思います。

一般的にフリーザは宇宙の悪の親玉として冷酷かつ残忍な性格として知られています。
実際に数々の星を攻め滅ぼし、罪のない宇宙人たちを殺してきたのは、すべてフリーザの命令によるものです。
しかし、そんなフリーザも罪のない者を殺すことは悪いことだという認識を持っているようなのです。
それが分かるのが正にこの悟空との一連のやりとりなのです。

フリーザは悟空の「罪もない者をつぎからつぎへと殺しやがって……」という糾弾に対して、「きさまらサイヤ人は罪のない者を殺さなかったとでもいうのか?」と言い返したわけですが、実はこれタイムラグがあるんですよね。
悟空のセリフの後、フリーザは悟空に渾身の一撃をくらい岩に激突し、そこから復活し悟空の元にゆっくりと戻った後にようやく反論しています。
アニメだとよりタイムラグの感覚が分かりやすいのですが、悟空のセリフからフリーザの返しまで30秒くらい空いているんですよね。
だからこそ、フリーザに「きさまらサイヤ人は罪のない者を殺さなかったとでもいうのか?」の前にわざわざ「罪のない者を殺しただと?」と言わせて、タイムラグによる視聴者が混乱しないようにさせています。
※アニメだと「きさまらサイヤ人のしてきたことが正しかったとでもいうのか?」に変更されています。

つまりフリーザは30秒近いタイムラグを挟んででも、悟空の「罪もない者をつぎからつぎへと殺しやがって……」という糾弾に反論したかったということになります。
しかも「えらそうなことをいいやがって……」と前置きをしています。
もしフリーザに「罪のない者を殺すこと」=「悪いこと」という認識がなかったら、「えらそうなことをいいやがって……」というセリフを使うでしょうか?
例えばサイコパスは、自分以外の人間に対する「愛情」「思いやり」などの感情が欠落していると言われます。
もし仮にフリーザが罪のない者を殺すことになんのためらいもないサイコパスであったとしたら、「えらそうなことをいいやがって……」なんてセリフは言わないはずです。

もちろんフリーザが実際にナメック星人を殺すことを命じたり、自分自身も躊躇なく殺したりもしていましたので、冷酷な人間であることは間違いありません。
ですが、それは感情の欠落や快楽殺人鬼のようなものではなく、利己的、営利目的でためらいなく冷酷になれるということであり、潜在意識レベルでは「罪のない者を殺すこと」=「悪いこと」という認識あるのだと思われます。
戦争でためらいなく人を殺す判断ができる指導者のようなものでしょうか?

だからこそ、悟空に「罪もない者をつぎからつぎへと殺しやがって……」と糾弾されたときに、潜在意識に押し込めてある良心を刺激され、どうしても反論したくなったのでしょう。

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