ベジータは大猿化にコンプレックスがあったのか?

サイヤ人
引用元 ドラゴンボール 集英社

ベジータと言えば、誇り高きサイヤ人に対するプライドを持っていることでも知られています。
地球にきてから大分丸くなったとはいえ、それでもサイヤ人の誇りだけは失わずにいる姿は印象的でしたし、だからこそベジータは悟空と最後までライバル関係でいられたのではないでしょうか。

そんなサイヤ人の象徴と言えばしっぽであり、大猿化だということに異論がある人は少ないかと思います。
実際、ラディッツが地球に襲来した際も、得意げに大猿化の能力について語っていました。
最もこの時にその意味を理解できたのは、クリリン、ブルマ、亀仙人だけで、悟空はまだ自分が満月を見ることで大猿に変身をするという事実を知りませんでしたが。

引用元 ドラゴンボール 集英社

大猿に変身をすれば戦闘力が10倍になるという話が事実だとすれば、ラディッツですら戦闘力は15,000に膨れ上がります。
大猿化にはしっぽと月という大きな弱点がありますので、1人や2人程度ではその弱点を知らている者が相手だった場合、しっぽ切断、月破壊をすればいいわけですから大した脅威ではありません。
しかし、これが弱点を知らない異星人を攻める時や、何十人、何百人というサイヤ人が徒党を組んだ場合は別です。何しろ一部のエリートサイヤ人は月を自ら作り出すことができるのですから、そういった者が後方部隊にいて、大量の大猿に変身したサイヤ人が全線で大暴れをすれば、弱点を知られているなどということは関係なくなります。
だからこそ、フリーザはサイヤ人を滅ぼすことにより、後顧の憂いを取り除いたのだろうと思われます。
この件については、下記の記事で詳しく考察していますので、興味のある方は是非ごらんください。

さて、上記のように大猿化はサイヤ人の強みのひとつであり、変身のために必要なしっぽはサイヤ人の象徴なのは間違いありません。
であるならば、サイヤ人はしっぽを持っていることに対して、誇りを感じていると考えられます。
ところが、その言動を見る限り、少なくともベジータ本人に限って言えば、誇りどころかしっぽや大猿化に対してコンプレックスを抱いている節すらあるのです。

まず、ベジータの大猿化は作中で対悟空戦の一度きりになってしまいましたが、変身前に次のような発言をしています。

引用元 ドラゴンボール 集英社

注目すべきは大猿に変身をすることに対して、「醜くてイヤ」だと言っているのです。
戦闘民族であるサイヤ人は強さに対して貪欲です。
実際、この発言の後に「オレ様の大猿は半端な強さじゃない」と言っています。
ベジータ自身も大猿化によって、はるかに強くなることは自覚しているのです。
なのに同時に美醜をも気にするというのはどういうことでしょうか?

これはおそらく、フリーザ軍の中でのサイヤ人の立ち位置が関係しているのではと思われます。
サイヤ人はフリーザ軍の中に取り込まれることによって、文化的生活を営むことができるようになったと言われています。
そうすると、ベジータのような一部のエリートサイヤ人の中には、姿を獣に変える変身を恥ずかしいことと感じるようにっても不思議ではありません。
一般の戦士階級の者ならばともかく、ベジータのような王子であれば父親に連れそって幼少期からフリーザや側近の幹部連中に会う機会も多かったでしょう。
そういった者たちと自身を比較して、大猿化やしっぽに対してコンプレックスをいだくようになったのでしょう。

このことを裏付ける事実として、ギニュー特戦隊のグルドがベジータに殺される際に以下のようなことを言っています。

引用元 ドラゴンボール 集英社

「低俗なサル野郎のサイヤ人」とは随分な言いぐさですが、この表現こそがフリーザ軍の中でのサイヤ人の評価そのものだったのでしょう。
そして、それはサイヤ人の仲間がすべて死に絶え、ナッパ、ラディッツと自分の3人だけになってしまった状況においては、ベジータがその評価をフリーザ軍の中で一身に受けていたはずです。

だからこそ、ベジータは大猿に変身をするのが「醜くてイヤ」だと思っていたのだと思われます。
しかし、それでも悟空との闘いにおいて、「醜くてイヤ」だと言いつつも、大猿に変身することで得られる強さを嬉しそうに独り言ちるベジータからは、サイヤ人の運命の悲哀を感じてしまいますね。

また、ベジータは悟空戦でしっぽを切られてから、その後しっぽが再生している様子がありません。
メディカルマシーンでケガが治った際もしっぽだけは再生しませんでしたが、「そのうち生えてくる」と言っていましたが、地球に移住してから年月が経過してからも再生しませんでした。
この事実に対しては様々な意見があり、大猿化の力を体に取り込んだからだとか、スーパーサイヤ人になるとしっぽが生えなくなるなどのような、根拠のないオカルト論に近いことがネット上では言われています。

しかし、ベジータはスーパーサイヤ人になる前からしっぽが生えなくなっていますし、大猿化の力を体に取り込んだというのは意味不明です。
これは、単純にベジータが自分自身でしっぽを定期的に切っているからだと考えるのが妥当な解釈です。
詳しくは下記の記事を参考にしていただきたいですが、おそらくベジータにがしっぽを切るようになったのは、「醜くてイヤ」だった「低俗なサル野郎のサイヤ人」との決別であり、大猿化になど頼らずともスーパーサイヤ人になりフリーザを倒した悟空に対するライバル心の表れなのではないでしょうか。

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