ドラゴンボール 第25話のあらすじ考察「ライバル?参上!!」

ストーリー
引用元 ドラゴンボール 集英社

前話其之二十四「亀仙人の修業料」では、悟空が亀仙人に弟子入りを志願し、修業料として「ぴちぴちギャル」を連れてくるよう命じられました。
しかし悟空が連れてきたのは亀仙人の期待とは正反対のがたいのでかいギャル。亀仙人は頭を抱え、悟空にもう一度探してくるよう命じます。
そして本話「ライバル?参上!!」では、悟空の二度目のぴちぴちギャル探しと、ドラゴンボール全編を通じて悟空の最大の親友となるキャラクター——クリリンの初登場が描かれます。

其之二十五「ライバル?参上!!」のあらすじ

前話でがたいのでかいギャルを連れてきて失敗した悟空は、懲りずに二度目のぴちぴちギャル探しに出かけます。
そして今度は、筋斗雲に乗せて美しい女性を連れてきました。筋斗雲の上から見える上半身は紛れもなく若くて美しい女性であり、遠くからその姿を確認した亀仙人は大興奮。「やった!!!」と喜びを爆発させます。

引用元 ドラゴンボール 集英社

亀仙人はさっそく悟空の弟子入りを認め、最初の修行として「あのギャルのパンチーをもらってこい!」と命じます。
当然「ぱんちい」の意味がわからない悟空は、素直にそのギャルに聞きに行きますが、戻ってきた悟空の報告は衝撃的なもの。「シャツ1枚だけでぱんちいははいてないとさ」。亀仙人は鼻血を噴き出すほど興奮し、自分の目でその姿を確認しようとギャルに近づきます。

しかし——そのギャルの下半身は人間ではなく、魚だったのです。
悟空が連れてきたぴちぴちギャルの正体は、人魚でした。ボディタッチをしようとする亀仙人に激怒した人魚は、海へと帰ってしまいます。

この「人魚」のエピソードは、前話のがたいのでかいギャルに続く「ぴちぴちギャル」すれ違いギャグの第二弾です。がたいのでかいギャルは「イキがいい」という悟空なりの解釈による失敗でしたが、人魚は上半身だけ見れば完璧な美女であり、亀仙人も一瞬ぬか喜びしている。しかし下半身が魚——つまり「ぱんちい」を履いていない理由が、亀仙人の期待とはまったく異なる方向で的中してしまうという、鳥山先生お得意の「期待の裏切り」が見事に決まったオチです。

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ちなみに、この人魚は筋斗雲に乗っていました。筋斗雲は清い心の持ち主でなければ乗れない乗り物です。ブルマも亀仙人も乗れなかった筋斗雲に乗れるということは、この人魚はかなりの善人ということになります。一話限りのモブキャラですが、「PIE PIE」とプリントされた赤いTシャツの裾結びという印象的な衣装デザインは、鳥山先生らしい遊び心が光ります。

そして人魚が去ったあと、ぴちぴちギャル探しが振り出しに戻ったカメハウスに、一人の小柄な少年がやってきます。坊主頭に額の六つの点——東の村からやってきたという少年、クリリンです。

クリリンは亀仙人に向かって丁重に挨拶し、弟子入りを志願します。しかしその手には、弟子入りの「手土産」としてエッチな本が抱えられていました。
クリリンはすでに亀仙人のスケベな性格を調べ上げており、エロ本で歓心を買おうとしたのです。案の定、亀仙人はエロ本に飛びつき、一気に気をよくします。この「手土産作戦」は、クリリンというキャラクターの本質——頭が切れて、ちょっとずる賢い——を初登場の時点で見事に印象づけています。

亀仙人は悟空とクリリン、二人ともを弟子にすることを前向きに考えますが、修業料の条件——ぴちぴちギャルを連れてくること——はまだクリアされていません。亀仙人は悟空とクリリンに改めてぴちぴちギャルを連れてくるよう命じ、二人はこの課題のために一緒に出かけることになります。
こうして、ライバル関係でありながら同じ目標のために協力するという、悟空とクリリンの関係性の原型がこの第25話で形成されるのです。

クリリンの「初登場」

ドラゴンボールにおけるキャラクターの初登場シーンは、どれも印象的です。ブルマのバイク、ヤムチャの狼牙風風拳、亀仙人のかめはめ波——それぞれの登場シーンでの演出が、そのキャラクターの特徴を後々まで印象付けています。

クリリンの場合、それは「エロ本の手土産」でした。この一点で、読者はクリリンについて瞬時に理解します。
この少年は頭がいい。亀仙人の性格をリサーチし、弱点を突いて取り入ろうとする計算高さがある。
この少年はずる賢い。正攻法ではなく「裏技」で状況を有利に運ぼうとする。
そしてこの少年は根っからの悪人ではない。エロ本を渡す程度のかわいい小細工であって、誰かを傷つけるようなことはしない。

引用元 ドラゴンボール 集英社

鳥山先生はインタビューで、クリリンは当初「使い捨てキャラクター」のつもりだったと語っています。一時的なライバルとして登場させ、役目を終えたら退場させる予定だった。
しかしご存じの通り、クリリンは退場するどころか物語の最後まで悟空のそばにいることになりました。42巻最終話まで生き残り、最終的に人造人間18号と結婚して娘のマーロンまでもうけるのですから、物語の展開とは本当に予測不能なものです。

それにしても、「使い捨て予定」だったにもかかわらず、初登場時のキャラ造形がこれほど完成度が高いことには驚きます。鳥山先生は「一話限り」のキャラクターであっても手を抜かない。先ほどの人魚も、名前すら与えられていないモブキャラでありながら、「PIE PIE」のTシャツや筋斗雲に乗れる設定など、一コマごとに情報量が詰め込まれています。

「多林寺」の設定が語るクリリンの背景

クリリンの出身寺院「多林寺(おおりんじ)」は、中国の嵩山少林寺をモデルにした架空の寺院です。少林が「多林」になるだけで、どこかコミカルな響きが生まれるあたりが鳥山先生らしいパロディ精神でしょう。

クリリンが多林寺で修業をしていた事実や、寺を飛び出した理由が「先輩たちのいじめに耐え切れなかったから」だという設定は、後の第21回天下一武道会の予選で明かされます。
クリリンの額にある六つの点は、多林寺の僧侶の証であるお灸の跡。つまりクリリンは、いじめられていた場所の「証」を額に刻んだまま、新しい師匠を求めてカメハウスにやってきたのです。

予選でクリリンが対戦したのは、かつて自分をいじめていた多林寺の先輩でした。亀仙人の修行を経て強くなったクリリンは、この先輩を蹴り一発で場外に吹っ飛ばしてしまいます。
一切の台詞も回想もなく、ただ圧倒的な実力差で黙らせる。鳥山先生は、クリリンの過去のトラウマをダラダラと語りません。過去は、ただ強さで乗り越える。それがドラゴンボールのスタイルです。

しかし第25話の時点では、クリリンはまだそこに至っていません。エロ本の手土産も、悟空への対抗意識も、根っこにあるのは「なめられたくない」「もう二度と弱い自分でいたくない」という切実な思いです。

「ライバル?」のクエスチョンマークに込められた意味

タイトル「ライバル?参上!!」の「?」が絶妙です。
クエスチョンマーク付きの「ライバル?」。悟空にとってクリリンは、強敵でも恩人でもない。ただ同じ師匠のもとで修行しようとしている同年代の少年でしかない。しかもちょっと胡散臭い。「こいつがライバル? ほんとに?」という疑問符は、悟空だけでなく読者も共有する感覚です。

このクエスチョンマークが外れるのは、二人が亀仙人の過酷な修行を共にし始めてからです。朝5時に起きて20キロの甲羅を背負い、広大な畑を素手で耕し、サメのいる湖で遠泳し、蜂の群れから身をかわす——この地獄のような修行を8ヶ月間ともに過ごすことで、二人の間にある壁は少しずつ溶けていきます。

もう一つの読み方もあります。クリリンにとって、悟空という存在は「才能の壁」そのものだったはずです。自分と同い年くらいの少年が、すでに亀仙人に気に入られ、筋斗雲に乗り、シッポが生えていて、しかもとてつもなく強い。多林寺でいじめられ、必死の思いで新しい師匠を求めてきたクリリンにとって、悟空の才能は圧倒的です。

しかしクリリンは逃げなかった。
多林寺ではいじめに耐え切れず飛び出したクリリンが、悟空という天才を前にしては逃げずに踏みとどまった。ここで逃げたら、もう行く場所がない。だからこそ小細工を使ってでも、なんとしてもこの場所に食い込もうとした。「ライバル?参上!!」は、クリリンの覚悟の物語でもあります。

そしてこの関係性は、後の物語全体のエモーショナルな核になっていきます。
ピッコロ大魔王編でクリリンがタンバリンに殺された時、悟空は生まれて初めて「仇討ち」のために戦います。ナメック星でフリーザにクリリンが殺された時、悟空はついに超サイヤ人に覚醒します。
つまり、悟空の人生における最大の転機は、すべてクリリンの「死」がトリガーになっている。その「死」が物語を動かすほどの重みを持つのは、二人の友情がこの第25話から丹念に積み上げられてきたからこそです。

エロ本を片手にやってきた生意気な坊主頭の少年と、それを胡散臭そうに見つめる尻尾の生えた少年——この「第一印象最悪」の出会いから始まった友情が、やがて宇宙を揺るがす変身の引き金になる。少年漫画の「友情」の物語として、これ以上の美しい構造はないと思います。

次話「?な女の子ランチ」では、悟空とクリリンが力を合わせてぴちぴちギャル探しに出かけます。
そこで出会うのが、くしゃみで性格が激変する謎の女性・ランチ。三度目の「ぴちぴちギャル」にして、ようやく亀仙人の条件をクリアし、亀仙流修行編のレギュラーメンバーがいよいよ揃い踏みすることになります。

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