フリーザが理想の上司という風潮を考察する

キャラクター
引用元 ドラゴンボール 集英社

フリーザ様は理想の上司。そんな話を聞いたりしたことある人はいなでしょうか?
ドラゴンボールのフリーザは宇宙の帝王として宇宙の星々を侵略しては、その星の住人を虐殺している悪役キャラクターです。
それが真逆の評価とも思える理想の上司と呼ばれるのはどうしてなのでしょうか?

Googleなどで検索すれば、この件ではたくさんの記事がヒットしますが、本気でフリーザを理想の上司と考えている人もいれば、単なるネタ的なものとしてとらえている人も多いようです。
また、フリーザが理想の上司だという話に対して、反発する人も一定数いるようです。
いわく「フリーザが理想の上司」というなら、お前はフリーザ軍で働けるのか?あんなに自分の部下やナメック星人を簡単に殺すようなやつが理想の上司のわけないだろう!という論調です。

言いたいことはわからなくはないのですが、上記の反論については若干の事実誤認もあるようです。
しかしだからといって、フリーザを理想の上司だと認めるのは性急だと思いますので、この記事では、まずはなぜフリーザが理想の上司と言われるのか、その理由や根拠、そして妥当性について検討していきたいと思います。

フリーザが理想の上司といわれる理由

そもそも理想の上司という表現自体が非常にあいまいで、ひとそれぞれの価値基準によって、何が理想なのか?は変わってきてしまうかと思います。
しかし、ここではあくまでインターネット上などでフリーザが理想の上司とされる理由について、まずは検証していきたいと思います。
一般的にフリーザが理想の上司とされる理由は以下の3点のようです。

  • 部下に敬語を使う
  • 一般兵に武器や防具などの装備品を支給している
  • 失敗をしても挽回のチャンスを与える
  • 実力主義で敵であっても勧誘をする

以下の考察はあくまで原作の描写、セリフのみを考察の基準としています。
アニメに関しては、引き延ばしのためや演出上の都合で原作にない描写やセリフが含まれており、原作と矛盾してしまったり、違う結論が導かれてしまう恐れがありますので、あくまで原作のみを判断基準としています。

部下に敬語を使う

これを理想の上司の理由としてよいのかは疑問に感じますが、ひとまず検証してみましょう。
たしかにフリーザはこれまでのドラゴンボールの敵役と違い、非常に丁寧な言葉を使うのが特徴です。
たとえば、有名なフリーザのセリフとして、ドドリアにクリリン、悟飯の追跡を命じた時に「追うんですよドドリアさん!!つかまえなさい!!!!」といったのがありますね。

引用元 ドラゴンボール 集英社

こんなとっさの命令を下す時でさえ、「つかまえなさい」という丁寧語を使っています。
さらに「ドドリアさん」という名前に「さん」をつけるという徹底ぶりです。
これはドドリアに限らず、ザーボンやギニューに対しても同様に名前に「さん」を付けて」読んでいます。
しかし、部下であれば誰に対しても同じような態度かというとそうではないようです。

引用元 ドラゴンボール 集英社

上記のシーンでは、アプールに対して呼び捨てで命令をしていました。
フリーザ軍内でアプールは一般兵です。
「さん」をつけるのは幹部クラスだけというように、フリーザの中には明確な基準があるのかもしれません。
ただ、呼び捨てにしているとはいえ、丁寧な言葉遣いは崩していません。
また、フリーザたちを追ってナメック星に到着したベジータに対しても呼び捨てしている描写がありました。
ベジータはフリーザ軍の中では幹部クラスの待遇を受けていたと思われますが、これも裏切り者に対しては、「さん」を付ける必要がないという事なのかもしれません。

いずれにせよ、これだけでフリーザが理想の上司とは判断できないものの、少なくとも部下に対して丁寧な態度で接しているという事は間違いないようです。

一般兵に武器や防具などの装備を支給している

確かに原作内のフリーザ軍の一般兵士は幹部たちと同じプロテクターと、全員ではありませんが手にハンドガンを装備していたりします。

引用元 ドラゴンボール 集英社

これは星の侵略の際などに、戦士とししてはそれほど強くなくても戦闘を優位に進められるようにという配慮なのかもしれません。
プロテクターにしても、幹部だけということはなく全員に支給されているというのもポイントが高いですね。
企業でいうところの制服支給のようなものでしょうか。フリーザ軍の福利厚生はそれなりに整っているようです。

これはつまりフリーザ軍は、戦闘力がそれほど高くない一般兵であっても装備品を支給することで、他の戦士たちと同等に戦えるようしているということになります。
また、フリーザ軍は一般兵も含め、全員がスカウターを装着していますので、相手の強さを事前に把握することで勝てない戦闘を避けることができます。
それは、結果的に兵士の死亡率を下げることにもつながっているはずです。

さらには、戦闘員ではないものにも事務方の職種も用意されているようです。
地球から惑星フリーザに逃げ帰ったベジータを出迎えた者、治療した者など、戦闘員ではなさそうな者が複数人確認できます。

フリーザが理想の上司かどうかの結論はひとまず保留にするとしても、これは組織としては非常にしっかりとしていると言えるとは思います。

失敗をしても挽回のチャンスを与える

地球での戦いでラディッツで命を落としたラディッツはピッコロからドラゴンボールの話を聞き、自分も生き返らせてもらう事を期待していました。
しかし実際には、ベジータに「あんな役にたたんやつはもういらん」と言われてしまいます。

ナッパも最初はラディッツを生き返らせるつもりでいたようですが、ベジータに永遠の命という案を聞かされると、あっさりとそちらに転んでしまいます。
そんなナッパも、1年後地球の戦いでベジータによってとどめを差される運命にあります。
このようにサイヤ人はたとえ仲間であったとしても失敗は死に値し、役に立たないものはあっさりと見捨てられてしまうようです。
(ナッパはラディッツを生き返らせるつもりだったことから、サイヤ人の性質ではなくベジータ自身の性格の問題かもしれませんが。)

では、そのベジータが所属するフリーザ軍、そしてそのトップであるフリーザ自身はどうでしょうか?
以下はザーボンが、ベジータに逃げられた上ドラゴンボールまで奪われてしまうという大失態を演じた場面でのフリーザのセリフです。
もしベジータに逃げられてしまったら、責任をとって死んでもらうと言われています。
このセリフを見る限り、フリーザもベジータと同様に部下の失敗を許さないタイプに思えます。

引用元 ドラゴンボール 集英社

では以下のシーンではどうでしょうか?
結局宇宙船の周りではベジータは見つからなかったため、ザーボンは1時間以内にベジータを連れ戻すよう命じられ、その際にもやはりベジータを連れ帰れなかった場合、フリーザ自らが殺すと忠告しています。

引用元 ドラゴンボール 集英社

ここだけを見るとフリーザが部下に対する失敗を許さないタイプだと判断してしまいそうになりますが、一つ前のシーンのフリーザのセリフの通りなら、そもそもベジータに逃げられてしまった時点で、ザーボンは責任をとって死ななければいけないはずです。
ですが、フリーザは即座にザーボンを殺すことなく、部下に対して挽回のチャンスを与えています。

もちろん、この時点でザーボンを殺してしまったら、フリーザ自身がベジータを探しに行かなければいけないことになりますので、それほフリーザにとっては面倒なことでしょう。
(これがベジータがフリーザの立場だったとしたら、即座に部下を殺して自分で探しに行っていたかもしれません。)
そのため、ザーボンをすぐには殺さずにベジータを探しに行かせただけであって、部下に失敗の挽回の機会を与えたとか、そんなのではく自分にとっての都合を優先させただけと考える人もいると思います。

しかし、こここそが「フリーザは理想の上司」なのか?ということを考えるうえで、非常に重要なポイントだと私は考えています。

実力主義で敵であっても勧誘をする

さらにフリーザの特徴として、敵であってもその強さを認めれば自分の部下として採用しようとします。三国時代の曹操のような実力主義を感じますね。
具体的なエピソードを紹介していきましょう。
原作内でフリーザから勧誘を受けたのはネイルと悟空の2人です。

まずネイルに関しては正確には勧誘を受けたわけではありません。
フリーザがドラゴンボールを集めたのに願いがかなわないため、願いのかなえ方を聞き出しに最長老の元へきた際に時間稼ぎのためフリーザと対峙し、その時にフリーザから「部下にほしいぐらいですよ」と言われます。
フリーザは、ネイルが気を開放し42,000まで戦闘力を上昇させたのをみて、驚きとともに上記のセリフを発します。

引用元 ドラゴンボール 集英社

勧誘しなかったのは、ナメック星人の性格をよく知っているフリーザには、この状況ではネイルが自分の部下には絶対にならないとわかっていたからでしょうね。

正真正銘部下に勧誘されたのは、悟空です。
悟空もフリーザとの交戦中にフリーザに部下に勧誘を受けます。

引用元 ドラゴンボール 集英社

フリーザにはっきりと「ボクの下で働いてみる気はないか?」と勧誘を受けます。
この時点でフリーザはギニュー特戦隊をはじめ有能な部下を多数失っているわけですから、体制立て直す意味でもギニュー隊長以上の実力をもつ悟空を味方に引き入れたかったのかもしれません。

しかし、なぜ悟空だけが勧誘を受け、ピッコロやベジータ、悟飯などはフリーザから勧誘を受けなかったのでしょうか?
ピッコロたちも少なくともネイル以上の強さは持っていたはずです。
これはおそらくですが、ベジータは裏切り者ですので論外ですし、ピッコロはネイルと同様にナメック星人は見方にはならないとわかっていたからでしょう。
また、以下の記事でも解説をしていますが、ギニュー隊長以上の実力を持っていたのが悟空だけだったというのもありますが、悟空とのやりとりでなんとなく部下として扱いやすいという印象を受けたのかもしれませんね。

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いずれにしろ、フリーザが実力主義で部下の勧誘をしている様子はうかがい知れますし、フリーザ軍の構成員の人種の多様性をみても、それは明らかでしょう。
ギニュー特戦隊なども元々フリーザに敵対する勢力だったという可能性も十分あるんじゃないかと思います。

理想の上司とは?

フリーザは理想の上司とすることに反発する人と、理想の上司だと主張する人との間で意見が食い違うのは、まず「理想の上司」の定義が違っていることや、現代社会における倫理観をマンガの中の世界にまで適用していることが原因なんではないかと思われます。
これは何もマンガなんだから細かいことは言うなよ、という類の話ではありません。
そうではなく、現在私たちが生きている日本の現代社会の価値観、倫理観を基準とした「理想の上司」と銀河中の惑星を侵略し、自分の直轄領にしていっているフリーザ軍の価値観、倫理観に適用しようとすれば、認識の差は生まれて当然です。

たとえば私たちが仕事で大きなミスをすれば上司から怒られたり、それが悪質な故意だったりした場合、最悪懲戒解雇になることもあるかと思いますが、これが仮に古代の戦場だったらどうでしょうか?
上官の命令に背いて、自軍を危機に陥れたりした場合、軍規に照らして処刑になるケースもあったはずです。
そもそも、命の価値自体が今と昔では違うのですから、当然処罰の度合いも違って当然です。
同様にフリーザ軍のような強いことが正義のような社会においても同じことが言えるのではないでしょうか?

しかし、そういった社会環境だという事を前提にした上で、フリーザ軍の特筆すべきことは組織の持続性が高いという事でしょう。
初めに「フリーザは理想の上司」される理由として検証したように、フリーザには以下の傾向が見られます。

  • 部下に敬語を使う
  • 一般兵に武器や防具などの装備品を支給している
  • 失敗をしても挽回のチャンスを与える

これは、部下に対して必要以上に威圧感を与えない。戦闘力が低い戦闘員や非戦闘員であっても活躍の機会をえられるようになっている上、死亡率を下げる取り組みもされている。
さらに、一度の失敗くらいでは即座に処罰を下すようなことはない。

これによって、フリーザ軍は非常に高い組織力と持続性を維持していると考えられます。
つまりフリーザは単なる「理想の上司」ではなく、有能な経営者、指揮官視点で物事を考え、判断していると言えます。
部下に敬語を使うのも、一般兵に装備品を支給するのも、部下の失敗を一度は許すのも別にフリーザが優しいからではありません。
組織を維持、強固にしていくのに、その方が効率が良いからです。
フリーザがどんなに強いと言っても、一人で宇宙中の惑星を侵略していけるわけではありません。
ドドリア、ザーボン、キュイのような高官クラスの戦士、ギニュー特戦隊のような特殊部隊、さらには戦闘力的にはそれほどでもないが、高度な科学技術によって作り出された武器防具を身にまとった一般兵たちによってフリーザ軍は成り立っているのです。

ドラゴンボールにおけるフリーザ軍の特殊性

実はドラゴンボールで上記のような組織的に敵というのは非常に少ないです。
複数人のチームや一見組織的に動いている敵というのは存在します。
たとえば初代ピッコロ大魔王率いる魔族やベジータ、ナッパ、ラディッツのサイヤ人グループ、ピラフ一味でしょうか?
しかし、これらはフリーザ軍のような高い組織力がありません。
なぜなら魔族はすべてピッコロ大魔王が生み出したものであり、言ってみれば家族です。
同様にサイヤ人も同族関係がありますので、フリーザ軍のように多種多様な人種によって構成された多星籍(?)組織とは根本からして違うのです。
ピラフ一味はまたちょっと特殊な関係ですね。あの3人には血縁関係もないと思われますが、上司であるピラフがすべてを失ってもついていくのは、組織というよりは友情に近いものを感じます。
一定の上下関係もあるようですが、あの3人だけが共有する何か特別な絆によって成立しているのかもしれません。

話が脱線してしまいましたが、唯一ドラゴンボールにおいてフリーザ軍のような高い組織力、持続性を持っていた敵はレッドリボン軍でしょう。
レッドリボン軍は少年期の悟空によって壊滅してしまいましたが、一時は警察も手に追いえないと言われていた世界最悪の私設軍隊だったようです。
ミサイルや戦車、ヘリなどの重火器、戦闘車両、航空機などを多数保有しています。
さらに、ブルー将軍のような拳法の達人が幹部クラスにいたり、ドクターゲロのような有能な科学者、そして多数の戦闘員が所属しているなど、構成員も非常にバラエティに富んでおり、非常に高い組織力がうかがえます。
フリーザ軍はこのレッドリボン軍の上位互換のような存在だったと思われます。

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