ドラゴンボールでは数々のかませ犬が登場しますが、その嚆矢ともいうべきキャラクターはヤムチャでしょう。
ヤムチャは無印ドラゴンボールの第7話で初登場し、最終話までサブキャラクターとして活躍をし続けた稀有な存在でもあります。
しかし、ヤムチャは前述したように、こと闘いにおいては主力ではなく悟空たちメインキャラクターやライバルキャラを引き立てるためのかませ犬役になってしまう事が多いのです。
そんな不遇なヤムチャの健気に闘う様をを表して「ヤムチャしやがって」という言葉まで生まれているほどです。
本記事ではそんなヤムチャにスポットを当てて、ヤムチャがいかにかませ犬のポジションを確立していったかを解説していきたいと思います。
少年悟空との対決
前述したようにヤムチャの初登場は早く、第7話で荒野の山賊として当初は悟空の敵役として描かれていました。
直接対決シーンは第8話なのですが、実はこの時の悟空は空腹で力を出して切れていなかったため、ヤムチャが優勢に闘いを進めていました。
しかし、後に悟空が腹いっぱいになった時の戦いでは、早くもかませ犬に成り下がってしまっています。
ヤムチャはこの悟空との闘いで前歯を失うという屈辱を味わっています。
それ以降、ヤムチャが悟空と闘う事はなく、その後はもっぱら敵キャラの引き立て役になっていきます。
天下一武道会でのジャッキー・チュン戦
次にヤムチャの活躍を見られるのは第21回天下一武道会です。
予選こそ危なげなく突破したヤムチャでしたが、本選1回戦でなんと亀仙人扮するジャッキー・チュンとあたってしまいます。
ジャッキー・チュンはこの天下一武道会で悟空を破り優勝を果たしますので、まさに不運としか言いようのないクジ運ですが、ヤムチャの天下一武道会でのクジ運の悪さは今回に限ったことではなく、後述する通り次回以降も同様になります。
このクジ運の悪さもあいまって、ヤムチャは永遠の一回戦ボーイの異名までつけられてしまいます。
そして、ヤムチャはたいした活躍の場を与えられることもなく、あっさりとジャッキー・チュンに敗れてしまいます。
あまりにもあっけなさ過ぎて、かませ犬ですらなかったのでは?という意見もあるかもしれませんが、一振りで場外にヤムチャを落としてしまうというジャッキー・チュンの実力の一端を垣間見せさせてたことはかませ犬として評価されるべきところでしょう。
占いババの館での闘い
さて、次のヤムチャの活躍は占いババの館での「透明人間スケさん」、「闘う干物ミイラ君」との闘いです。
実はこの透明人間スケさんとの闘いがヤムチャの戦歴の中で唯一の勝利(天下一武道会予選やモブキャラとの闘いを除く)と言ってもいいかもしれません。
しかし、その勝利もクリリン、亀仙人のアシストで透明人間スケさんの居場所を特定できるようになったことによるものであり、実力だけではスケさんにすら敗れていただろうことを考えたら、ちょっとヤムチャの扱いがかわいそうになってきますね。
そして案の定、次の「闘う干物ミイラ君」との闘いでは、完全な実力対決になってしまいますので、ヤムチャはボコボコにやられてしまいます。
天下一武道会での天津飯戦
お次は第22回天下一武道会1回戦の天津飯戦です。
ヤムチャはこの闘いでもお約束の通り1回戦で敗れることになるのですが、ヤムチャのかませ犬っぷりをいかんなく発揮した闘いとして、長く語り継がれていくことになります。
それを象徴するのがこのヤムチャのセリフでしょう。
これは試合開始前に天津飯に言い放ったヤムチャのセリフなのですが、ヤムチャは出会った瞬間から天津飯に敵意をむき出しにしていて、上記以外にも、「きえろ ぶっとばされんうちにな」「きのどくににな いきなりきえることになるとは」などの数々のいきり散らかしたセリフを放っています。
しかし、実際にあっという間に白目をむかされたのはヤムチャの方でした。
元々天津飯は悟空のライバル役として登場したキャラのため、しょせんヤムチャが勝てる相手ではなかったのですが、こんな恥ずかしいセリフを言わされていなければ、ここまで黒歴史化することもなかったかもしれませんね。
天下一武道会でのシェン(神様)戦
次の対戦相手は天下一武道会でシェン(神様)です。
神様は人間の力を借りて本来の力を発揮できていないとはいえ、初代ピッコロ以上の強さを持っていると思われるキャラです。
そんな実力差に一回戦にあたるところは、もはや天下一武道会の風物詩になっていますね。同じように実力では悟空たちについていけなくなっているクリリンですら毎回1回戦は突破して、準決勝までコマを進めているのに比べると、ヤムチャの不遇さが浮き立っています。
さて、試合内容はというと、これまでに輪をかけてひどく、完全なピエロ的な扱いを受けてしまっていました。
これは流石にかわいそうすぎますね。
繰気段で一矢を報いることができたのがせめてもの救いでしょうが、本当の実力を見せたシェンの前にあっさりと場外負けになってしまいました。
サイバイマン戦
ついにやってきました。サイバイマン戦です。
この闘いはヤムチャにとって実質的な引退戦とも呼べるものになってしまいます。
というのも、この後もヤムチャは闘いの場所にこそ顔を出しますが、まともに闘う事はなく一方的にやられるだけのキャラに成り下がってしまいます。
そんなヤムチャの引退戦の結果はというと、ご存じの通りサイバイマンの自爆による相討ちに終わります。
最後の戦いでも勝利を収めることができないというのは、あまりにも不憫すぎますね。
さらに、ヤムチャが死亡した後、クリリンが拡散エネルギーはで残ったサイバイマンのほとんどを一掃してしまいますので、完全にクリリンの引き立て役にされてしまいました。
そして、自爆によって倒れ伏した様が独特な哀愁と憐憫の感情を読者に与えたのか、後に公式でフィギュア化されるまでに有名になってしまいます。
「ヤムチャしやがって」という言葉もこれらのヤムチャの実力的に上位のものに対して果敢に挑み、結果無様に敗れてしまうお約束の展開から生まれたものだと思われます。
ナメック星編以降のヤムチャの扱い
さて、ここまで見てきてヤムチャのかませ犬っぷりを再確認することができたかと思いますが、前述したようにそれ以降もヤムチャは一応戦いの場に姿は現します。
しかし、まともな闘いは一戦もなく、一方的にやられるだけになってしまい、かませ犬や引き立て役の役割すら果たせなくなってしまいます。
人造人間20号に腹を貫かれて死にかけ、悟空たちの闘いを観戦するだけにつもりだったセルゲームでは、まさかのセルジュニアの襲来で一方的にぼこぼこにされてしまいます。
こうなると、主人公と敵との闘いに巻き込まれるモブキャラ的なポジションの方が近しいかもしれません。
しかし、ドラゴンボールではほとんどのキャラクターが戦闘力のインフレについていけず、出番がなくなる中、ヤムチャはヤムチャなりのポジションを確立したともいえるかもしれません。
死亡シーンがフィギュア化されたりするのも、ヤムチャが今でも読者から愛されている証拠だと思われます。
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