ドラゴンボール 第51話のあらすじ考察「天下一武道会大騒然!!」

フリーザ手加減説
引用元 ドラゴンボール 集英社

其之五十一のサブタイトルは「天下一武道会大騒然!!」です。前話のラストで満月を目にした悟空は、萬國驚天掌の電撃を振りほどいて大猿へと変わり、武道会場を壊しはじめます。アナウンサーも観客もクリリンも、目の前で何が起きているのかを理解できません。

そんな大混乱のなかで、ジャッキー・チュンは「解決する方法はただひとつ」と腹をくくります。上着を脱ぎ捨て、全身の筋肉をふくらませて放ったのは、かめはめ波の最大出力(マックスパワー)でした。そして爆煙が晴れたとき、クリリンの口から飛び出したのは「悟空が死んだ」という叫びです。わずか14ページのなかで、決勝戦は武道の試合から災害対応へと姿を変えてしまいます。

其之五十一「天下一武道会大騒然!!」のあらすじ

悟空が巨大なサルになってしまった――アナウンサーは信じられないという様子で、会場に向けてそう伝えます。萬國驚天掌の電撃を内側から破られたジャッキーも、さすがに動揺を隠せません。

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大猿となった悟空は、選手控えの建物を叩き壊し、屋根の一部をつかんで放り投げます。観客たちは悲鳴をあげて逃げまどいますが、アナウンサーは自分の立場上ここから逃げるわけにはいかないと踏みとどまります。するとジャッキーは、自分はもっと深刻だ、逃げたら場外負けになってしまうと返します。

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暴れ続ける悟空に向かって、クリリンはそんな危ない技はやめて早く元に戻れと呼びかけますが、返ってきたのは投げつけられた壁のかけらでした。そこでヤムチャが、これは技などではない、悟空は満月を見ると怪物になってしまうのだと説明します。その言葉を耳にしたジャッキーは、この事態を収める方法はひとつしかないと決断します。

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踏みつぶそうと迫る大猿の足をすんでのところでかわしたジャッキーは、上着を脱ぎ捨てます。ヤムチャはプーアルに、刃物に化けて悟空のシッポを切れと叫びますが、ウーロンがヤムチャに指し示したのは、フライパン山のときと同じように筋肉を盛り上がらせた老人の姿でした。

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ジャッキーは大猿を見上げ、かめはめ波の最大出力を宣言します。ヤムチャが待てと叫んだときにはもう遅く、巨大なかめはめ波が放たれて大爆発が起こります。煙が晴れたあと、クリリンは信じられないといった表情で、悟空が死んでしまったと叫ぶのでした。

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「なんという技」──大猿を”技”としか理解できない人々

この回でまず面白いのは、大猿を目の当たりにした人たちの多くが、それを「技」として受け止めていることです。アナウンサーは驚きながらも、いったいどんな技なのかと実況を続けようとします。クリリンも、悟空がとんでもなく危険な技を使っていると思い込み、元に戻るよう説得しようとしました。

これは、ある意味で無理もない反応です。第21回大会では、残像拳、酔拳、よいこ眠眠拳、そして直前の萬國驚天掌と、常識はずれの技が次々に披露されてきました。武舞台の上で起きる異変は、まず技だと考える。それが、この大会を見てきた人たちにとっての自然な受け止め方だったのでしょう。

しかしクリリンの説得は、壁のかけらという形で跳ね返されます。前回の記事でも触れたように、大猿の悟空には敵と味方の区別がありません。「技」であれば使い手の意志があるはずですが、大猿にはそれが通じない。クリリンが投げつけられた壁は、このことを何よりもはっきりと示しています。

ここで正しい答えを持っていたのは、ヤムチャだけでした。ピラフ城で大猿の悟空を目撃しているからです。一方のクリリンが初登場したのは其之二十五で、ピラフ城の一件よりも後のことです。クリリンが大猿を知らないのは当然で、悟空の兄弟弟子でありながら、この場面では一番の部外者になっていました。前回、ヤムチャだけが青ざめていた理由が、この回のヤムチャの説明によって言葉としても明かされたわけです。

「逃げたら場外負け」──大混乱のなかでも生きている試合のルール

観客が逃げまどうなか、アナウンサーとジャッキーが交わすやりとりは、この回でいちばん鳥山先生らしい場面かもしれません。アナウンサーは職務上逃げられないと言い、ジャッキーは逃げたら場外負けになるからもっと大変だと言う。会場が壊されている最中に、二人はまだ試合のルールの話をしているのです。

笑える場面ですが、ここには大事な意味が含まれています。少なくともこの時点で、決勝戦は中断も中止もされていません。大猿が暴れていても、武舞台の上ではルールが生きている。そしてジャッキーは、そのルールを律儀に守ろうとしています。

裏を返せば、ジャッキーには「いったん逃げて、外から対処する」という選択肢がなかったことになります。武舞台から降りずに、目の前の巨大な怪物をどうにかしなければならない。この制約が、ジャッキーを最大出力のかめはめ波という、遠くまで届く手段へと向かわせた側面もあるように思えます。

もうひとつ注目したいのが、アナウンサーの職業意識です。観客が我先にと逃げ出すなかで、アナウンサーは自分の立場を理由にその場にとどまり、目の前の異変を実況し続けようとしました。命の危険を前にしても仕事を投げ出さない姿は、笑いを誘うと同時に、この大会を支えている人物の芯の強さも感じさせます。武舞台から逃げられない選手と、実況席から逃げない審判役。大混乱の会場で最後まで「試合」の枠組みを保っていたのは、この二人だったのです。

試合がまだ続いているという事実は、この後の展開にも直結してきます。大猿の騒動が収まったあと、武舞台に残った二人の勝負がどう扱われるのか。その答えは次回に持ち越されます。

シッポか、満月か──ヤムチャとジャッキー、二つの解決策

この回では、大猿を止めるための方法が二つ示されます。ひとつはヤムチャの方法です。プーアルを刃物に化けさせて、シッポを切る。これは其之二十二のピラフ城で、プーアルがハサミに化けて悟空のシッポを切り落としたときの再現です。一度成功した方法であり、悟空の命を奪わずに済む、もっとも穏当な解決策だと言えます。

ただし、ピラフ城のときも、シッポはいきなり切れたわけではありません。プーアルにシッポが悟空の弱点だと言われたヤムチャが、まず大猿のシッポをつかみ、動きが止まったところでプーアルがハサミに化けて切り落としました。つまりこの方法は、暴れる巨大な怪物の背後に回り込み、シッポに手が届くところまで近づけて初めて成り立ちます。武道会場の大猿は、建物を壊し、壁のかけらを投げつけてくる状態です。ヤムチャの策は確実ではあっても、すぐに実行できる保証はありませんでした。

もうひとつがジャッキーの方法です。注目したいのは、ジャッキーがどんな情報をもとに決断したかです。ジャッキーが耳にしたのは、悟空は満月を見ると怪物になるというヤムチャの説明でした。ジャッキーが決断したのはこの説明を聞いた直後で、ヤムチャがプーアルにシッポを切れと叫ぶのはその後のことです。決断の瞬間のジャッキーにとって、変身の原因は「満月」でした。

同じ事態を前にしながら、二人は違う情報をもとに、違う場所に解決策を求めています。ヤムチャは悟空の体(シッポ)に、ジャッキーは変身のきっかけに。ジャッキーの言う「ただひとつの方法」が何だったのかは、この回では明かされません。ただ、ジャッキーがわざわざ「満月」という言葉を聞いて決断したという描写は、次回の種明かしに向けた、さりげない布石になっています。

そう考えると、ヤムチャの「待て」という叫びにも重みが出てきます。ヤムチャから見れば、シッポを切るだけで元に戻せるのに、ジャッキーが悟空ごと吹き飛ばそうとしているように見えたはずです。穏当な解決策を知っている者ほど、ジャッキーの行動は無謀に映ります。読者もまた、このときはヤムチャやクリリンと同じ目線で、ジャッキーが悟空を撃ったと受け止めることになります。

MAXパワー再び──フライパン山と天下一武道会をつなぐ筋肉

ジャッキーが上着を脱ぎ捨てる動作は、古くからの読者にとって見覚えのあるものです。其之十四「亀仙人のかめはめ波!!」で、亀仙人はフライパン山の火事を消すために上着と甲羅を外し、やせた体をあらわにしました。そこから筋肉をふくらませて放ったかめはめ波は、火事を消すと同時に、山ごと牛魔王の城まで吹き飛ばしてしまいます。亀仙人自身も、やりすぎたと認めていました。

作中で初めて描かれたかめはめ波は、試合や決闘のためではなく、火事という「災害」を止めるために使われたものでした。そして今回の最大出力もまた、暴れる大猿という「災害」に向けられています。亀仙人が全力を解き放つのは、少なくともこの二つの場面では、誰かに勝つためではなく、手に負えない事態を収めるためでした。武術を私利私欲に使わない武天老師らしい、力の使い方だと言えるのではないでしょうか。

第21回大会のなかで、ジャッキーがかめはめ波を使ったのはこれが初めてではありません。其之四十三のクリリン戦では、場外に落ちかけた体を武舞台へ戻すためにかめはめ波を使い、其之四十七では悟空とかめはめ波を撃ち合っています。しかし、どちらの場面でも筋肉をふくらませる最大出力の姿は見せていません。弟子の力を試す「試合」では、最後まで全力を封印していたわけです。そのジャッキーが初めて全力を解き放った相手は、悟空ではなく、悟空を飲み込んだ大猿という「事態」そのものでした。

もうひとつ見逃せないのは、ウーロンの反応です。ウーロンはフライパン山の場に居合わせており、亀仙人の最大出力を目撃しています。そのウーロンが、筋肉をふくらませた老人の姿をヤムチャに指し示しました。

ジャッキー・チュンは、カツラを引っ張られても取れず、コロンで体臭までごまかして、亀仙人であることを隠し通してきました。ところがこの場面では、フライパン山で見せたのと同じ姿を、それを知る者たちの前でさらしています。正体を隠すことよりも、悟空と会場を救うことを優先した。最大出力の筋肉は、ジャッキーがこの瞬間だけ変装の都合を捨てたことの表れでもあったのです。

「悟空が死んだ」──アニメ化告知号に描かれた主人公の”死”

其之五十一は、爆煙の向こうを見たクリリンの「悟空が死んだ」という叫びで幕を閉じます。前回は「まいった」の最後の一音で引き、今回は主人公の死を思わせる叫びで引く。決勝戦の終盤、鳥山先生は毎週のように読者を次号へと引っぱり続けています。

おわりに

其之五十一は、爆煙の向こうを見たクリリンの「悟空が死んだ」という叫びで幕を閉じます。前回は「まいった」の最後の一音で引き、今回は主人公の死を思わせる叫びで引く。決勝戦の終盤、鳥山先生は毎週のように読者を次号へと引っぱり続けています。

大猿の出現によって、武道会場全体が「大騒然」とりましたが、大猿を技と誤解する人々、ルールに縛られたまま逃げられないジャッキー、シッポを切ろうとするヤムチャ、そして「満月」という言葉を聞いて決断したジャッキー。同じ混乱のなかで、それぞれが持っている情報の違いが、そのまま行動の違いとなって表れています。

そしてジャッキーは、フライパン山を思わせる最大出力の姿で、正体が露見しかねないことも構わずにかめはめ波を放ちました。煙の向こうで、悟空は本当に死んでしまったのか。ジャッキーが選んだ「ただひとつの方法」とは何だったのか。次回、其之五十二「クライマックス近し!!」で、その答えが明かされます。そしてそれは、決勝戦の勝敗にも大きくかかわってくることになります。

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