ドラゴンボールのナメック星編の面白さの一つは、その絶妙なパワーバランスにあったのは間違いないでしょう。
人造人間編以降の闘いは、ベジータに言わせればスーパーサイヤ人にしか踏み込めない領域になってしまっており、かろうじてピッコロが神様との融合で少しだけ食らいつけている状態でした。
しかし、ナメック星編までの闘いは、まだ極端なインフレが起きておらず、クリリンや悟飯でも戦略や機転を駆使して戦いに参戦できていました。
単純な戦闘力だけに左右されない展開が、これまでにないハラハラドキドキ感を与えてくれていたのだと思います。
そして、その展開の妙に一役買っていたのは、なんといっても戦闘力のバランス感でしょう。
特にナメック星編の影の主人公ともいわれるベジータは、キュイ、ドドリア、ザーボン、変身ザーボン、リクーム、ジース、フリーザと連戦を続けていきます。
そして、ジース戦までは戦闘力が作中で明示されており、かつ戦闘描写と照らしても整合性がとれていたため、読んでいる読者としてもすんなり物語に入り込めたのではないでしょうか?
さて、本記事ではそんなナメック星編でも、筆者が特に印象深いと感じているザーボンとベジータの闘いについて取り上げたいと思います。
ザーボンの変身によるパワーアップ
前述したようにザーボンとベジータは二戦しています。
一戦目、地球で瀕死の状態から復活したことでパワーアップを遂げたベジータが、初めのうちはザーボンを圧倒していました。
ベジータは戦闘力のコントロールの技術も、悟空たちの戦い方から見よう見まねで独学で身につけていたのですが、この戦闘センスは流石としかいいようがないですね。
しかし、追い込まれたかにみえたザーボンでしたが、変身によるパワーアップという奥の手を残していました。
ザーボンによれば自身の変身はサイヤ人のように不必要に巨大化はせず、ただ圧倒的にパワーが増すだけだとのこと。
そして、そのパワーアップによってベジータは一気に形勢逆転をされてしまいます。
ベジータの復活パワーアップ
変身ザーボンに完敗したベジータでしたが、事前にフリーザたちがまだ襲っていないナメック星の村のドラゴンボールを隠していたことが功を奏し、フリーザの命令によって命を助けられます。
ザーボンにとって誤算だったのは、死の淵より復活することにより大きくパワーをアップすることができるというサイヤ人の特性を忘れていた事でしょう。
この特性によりベジータはさらに強くなり、後の二戦目でザーボンを撃破することに成功しています。
このベジータとザーボンの二戦目の闘いをみて、復活パワーアップ後のベジータは変身ザーボンの戦闘力を上回ったと考えている人が多いように思います。しかし、本当にそうなのでしょうか?
余裕がないベジータ
よくよくこの闘いの経過を見てみると、復活パワーアップ後のベジータがザーボン以上の戦闘力になったのか怪しい場面がいくつかあるのです。
まず、ザーボンがベジータの元にやってくるところから見てみましょう。
この時、ベジータは「来やがったな・・・」と冷や汗をかきながら言っています。
一戦目で完膚なきまでにやられたとはいえ、この時点で変身ザーボンの戦闘力を上回っている確信があれば、もっと余裕のある表情を浮かべていたのではないでしょうか?
さらに変身ザーボンがベジータに襲い掛かる場面です。
この時ベジータは、前回の闘いで自分を圧倒した自信からか、ザーボンが本気を出さずに、つまり油断してかかってきていることを見抜きます。
注目すべきは、この時もベジータは冷や汗をかきながら「やはり油断してやがる・・!!」と笑みを浮かべていることです。
これも、もしベジータが実力で変身ザーボンの戦闘力を上回っていたならば、油断していることに、冷や汗をかきながら笑みを浮かべたりしないでしょう。
ベジータによる不意打ち作戦
さらに極め付きは、ベジータの戦い方です。
変身ザーボンの攻撃をよけたベジータは空中から土をザーボンに向かって落とし、目くらましをさせたところに後ろからパンチをくらわし、大ダメージを与えています。
正攻法ではなく奇襲、不意打ちで闘いを一気に有利な状況にもっていたのです。
実際、このベジータの攻撃で変身ザーボンは大きく戦闘力を落とし、後は真正面からのぶつかり合いでベジータにやられてしまっています。
ザーボンの油断、不意打ちがあったとはいえ、実際に変身ザーボンを撃破しているわけですからベジータが大きくパワーアップをしているのは確かです。
もしかしたら、まともに闘ってもベジータが勝っていた可能性はあったと思います。
しかし、ベジータも復活パワーアップで確実に変身ザーボンの戦闘力を上回ったと言えるかどうか微妙なところで、よくて互角くらいと踏んでいたのではないでしょうか?
ここでまともにザーボンと闘って仮に勝てたとしても、自分も大きなダメージを負ってしまえば、後のフリーザとのドラゴンボール争奪戦に影響を与えかねないし、その場にいるクリリンにやられてしまうという可能性もなくはなかったはずです。
だからこそ、ベジータは確実にザーボンを仕留められる方法をとったのでしょう。
この頃のベジータは、後の誇り高きサイヤ人というより、勝つためなら何でもやる、目的のためには手段を択ばないというクレバーさがありましたね。
地球に移住してからは、徐々に目的よりも手段を重視するように心境が変化していったのも、おそらく悟空の影響だったと思いますが、こうした点に着目してドラゴンボールを読んでみるのも面白のではないでしょうか。
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