ドラゴンボールの未回収伏線を考察する

設定の考察
引用元 ドラゴンボール 集英社

ドラゴンボールは最近のマンガと比べて意図的な伏線回収が少ないと言われています。
例えばワンピースや進撃の巨人などは、物語序盤に作者が意図的に仕掛けたのだろうと思われるような描写が後々の展開に意味を持ってくるということがよくあります。

しかし、ドラゴンボールは作者が物語の終盤まで見通して描いていたわけではなく、当初はマジュニアとの闘いで終わらせるつもりだったとか、フリーザ戦で終わらせる予定だったが、人気絶頂の最中、作者の意志だけでは終わらせることができなかったため、人造人間編、ブウ編が描かれたといったことが今でも語り草になっています。

そういう意味では、ドラゴンボールは良くも悪くも行き当たりばったりで物語が作られていて、一見、伏線回収とは無縁の作品のように思えます。
ですが、ドラゴンボールには作者が元々意図をしていたわけではないですが、過去の設定や発言をうまく利用して伏線回収のようなかたちになっている展開が多数あります。

例えば悟空にしっぽが生えているという設定や、ウーロンの「悟空は宇宙人なんじゃないか」という何気ない発言が後のサイヤ人設定に活かされているのは、作者が当初から意図していたものではないにせよ、伏線回収として見事に成立しています。

他にも第23回天下一武道会の準決勝戦で、神様とマジュニア(ピッコロ)が謎の言葉でやりとりをするシーンが、後にナメック語として伏線回収されています。
これも、もし作者が本当にマジュニア編でドラゴンボールを終了させるつもりでいたなら、伏線として回収されることはなかったでしょう。

前置きが長くなりましたが、ドラゴンボールにも当初からの意図的ではないにせよ、結果的に過去の設定や発言が伏線として回収される展開はいくつかあります。
しかし、物語終了を迎えた段階で伏線として回収されなかった。正確に言えば、どのような意図があったのか分からない設定というのも存在します。
本記事では、そのような「未回収伏線」について考察していきたいと思います。

人造人間16号の強さの謎

人造人間16号は、人造人間編の中盤に唐突に登場した人造人間で、17号、18号のような人間をベースに改造をしたタイプではなく、ドクターゲロがゼロから作り上げた完全機械型の人造人間です。

その強さは、人間ベースの17号、18号の強さをはるかに上回り、神様と融合したピッコロを圧倒できるエナジー吸収セルと互角に闘えるレベルです。
冷静に考えて17号、18号の強さも大概ですが、16号は輪をかけてとんでもない強さですね。

ドクターゲロ自身も「この世界そのものをほろぼしたいのかっ」というほどの強さを持っていたわけですが、レッドリボンを壊滅させた少年期の悟空への復讐のために作ったにしては、オーバースペックなのは間違いありません。

引用元 ドラゴンボール 集英社

そして、このドクターゲロの発言に大きな謎というか、伏線として回収されてもよかったのではと思われるような謎が残っているのです。

人造人間16号はなぜ失敗作なのか?

ドクターゲロは「16号は試作型で失敗作なんだ!!ぜったいに動かすんじゃない!!!」といっています。
動かせば、「この世界そのものをほろぼす」ことになるというのです。
たしかに強さだけを見ればそうでしょう。地球を簡単に消すことができるフリーザよりも、はるかに強いパワーを持っているのですから。

しかし、実際の人造人間16号は世界を滅ぼすどころか、その性格は非常に温厚で、鳥や自然を愛し、いたずらに命を奪ったりしませんでした。

むしろ、16号は自分が作られた目的は「孫悟空を倒すこと」だと明確に認識していて、それ以外の意味のない闘いや殺戮は行わないという考えを持っているようです。

引用元 ドラゴンボール 集英社

このことだけを見れば、ドクターゲロにとっては命令を聞かなくなった17号、18号よりも御しやすく悟空を倒すには最適な人造人間だったのでは?という気もしてきます。

16号の体内に隠された爆弾

一応、上記の謎に対して、伏線回収らしきエピソードというのは存在します。
それは、セルゲームにおいて、打つ手なしと悟った16号がセルに抱き着いた場面です。
なんと自分の体内には、とてつもない破壊力を持った爆弾が隠されていて、それを使って自爆してセルを倒そうというのです。

引用元 ドラゴンボール 集英社

セルの強さを知っている16号が自爆で倒せると考えているわけですから、その破壊力というのはおそらくとてつもないものだと予想されます。
この爆弾をドクターゲロは恐れていたと考えることもできますが、爆弾を設置したのはドクターゲロです。
爆弾の破壊力を恐れたなら後からいくらでも取り外すことできたはずですから、それをもって「失敗作」や「世界そのものをほろぼす」ということは難しいのではないでしょうか?

ましてや、すでに17号、18号の時点で、地球を簡単に消すことができるフリーザよりも強いことが確定しているのですから、爆弾ごときで今さら恐れるというのもおかしな話です。

メタ的な考察

というように、人造人間16号の強さに対するドクターゲロの発言は、解釈が難しい謎となっています。
だからこそ未回収伏線といえるわけなのですが、実はこの謎には、人造人間編からセル編にいたる物語誕生の裏話が関わっていると思われます。

元々、人造人間編がはじまった当初、ラスボス的な位置づけは人造人間19号、20号(ドクターゲロ)だったようなのです。
しかし、鳥山先生によって実際に描かれた人造人間19号、20号はデブタイプ、ジジイタイプで、敵キャラとしての魅力がなかったため、編集からの要望による路線変更で人造人間17号、18号が描かれることになったと言われています。
その紆余曲折の過程で、人造人間のナンバリングに矛盾が生じてしまったわけですが、この謎については以下の記事で考察していますので、この場では詳しく解説しません。

しかし、その代わりに描かれた17号、18号も少年少女タイプでラスボスとしてのインパクトに欠けていたため、16号も同時に描かれました。
しかし、その16号もやはり編集者によって、ラスボスとしてのインパクトに欠けるという事で、セルという設定が生まれ、さらに第二形態、完全体へと変身をしていくことになったと言われています。

つまり、16号が描かれた当初はラスボスとして作者は考えていた可能性があり、ドクターゲロの「16号は失敗作」「世界そのものをほろぼす」という発言もラスボスとして悟空たちと対峙した際を見越した伏線を考えていたのかもしれません。

最終的にはセルがシリーズのラスボスとして落ち着いたため、16号の伏線が回収されることはありませんでした。
ドラゴンボールのマンガとしての面白さを優先させるなら必要な路線変更だったのかもしれません。
ですが、16号がラスボスとなり、どのような伏線回収がされる予定だったのか、ファンとしては気になりますね。

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