下記の記事でナメック星編における戦闘力の謎をフリーザ手加減説で解説していますが、新たな疑問が提示されましたので、それについて考察をしていきたいと思います。
その疑問とは、悟空がフリーザ戦に備えてメディカルマシーンの中で傷を回復していた際に、外で闘っているベジータとフリーザの気を感じながら思考しているシーンの内容です。
この時、悟空は以下のように思考しています。
「これじゃオラのカラダが完全になおっても勝てねえかも…」
「あいつ(ベジータ)もとんでもなく強くなっていたはずなのに…」
「フリーザとはそこまで強いのか…!」
悟空がこのように考えるという事は、傷が回復して死にかけパワーアップをする前のベジータやフリーザは自分よりも強いと感じているということになり、フリーザが手加減していたり、ベジータがギニュー以下の戦闘力しかないというのはありえないだろうという理屈です。
そもそも悟空はフリーザたちの戦闘力を正確に感じ取れていない
この疑問を考察していくには、まず悟空の思考の真意を明らかにしていかなければいけません。
悟空が「傷が回復して死にかけパワーアップをする前のベジータやフリーザは自分よりも強いと感じている」ということが正しいとするためには、悟空がフリーザやベジータの気の大きさを正確に感じ取り、自分と比較できている必要があります。
ですが、実はこの時の悟空はフリーザたちの気の大きさを正確に感じ取れていないようなのです。
それは、思考の端々から読み取れます。
まず、「あいつ(ベジータ)もとんでもなく強くなっていたはずなのに…」ですが、「強くなっていたはずなのに」と推定表現となっています。
また、上記を受けた「フリーザとはそこまで強いのか…!」も、フリーザの気を正確に感じ取って「強い」と評価しているのではなく、「とんでもなく強くなっていたはず」のベジータを一方的にいたぶることができるということは、「そこまで」強いのかという推定評価となっているのです。
ということは、「これじゃオラのカラダが完全になおっても勝てねえかも…」というのもフリーザの気を正確に感じ取り、自分と比較しての評価などではないということになります。
距離と気の感知の精度についての考察
では、なぜ悟空ほどの気のコントロールの達人が、このような曖昧な表現でしかフリーザやベジータの強さを評価できなかったのでしょうか?
それは、気の感知の精度に対して根本的な誤解があるからだと思われます。
多くの読者はなんとなく、気の感知の精度はかなり高いと考えているかと思いますが、ドラゴンボールの原作を丁寧に読み込んでいくと、そんなことはなくむしろ非常にあいまいで頼りにならないものだという事がわかってきます。
結論から先にいうと、気の感知の精度は対象との距離に応じて下がるという事です。
この仮説を証明するシーンが複数ありますので、順に紹介していきます。
フリーザ軍がクリリン、悟飯の前を通過するシーン
ひとつめの事例はナメック星にクリリン、悟飯、ブルマが到着し、フリーザ軍がクリリンたちの目の前を通過するシーンです。
この直前にクリリン、悟飯はフリーザ軍の接近に気の感知能力によって気づき、姿を岩場の陰に隠します。
この時点では、大きな気が近づいているということしか感じ取れていません。
しかし、フリーザ軍が通り過ぎた後、クリリンと悟飯はフリーザ軍、特にフリーザの気の大きさに驚愕し、震えあがっています。
ということは、フリーザ軍と距離が離れている間は感じ取れなかったフリーザの気の大きさを、そばまで接近することによってようやく感知できたということになります。
また、下記のクリリンのセリフでは、「ベジータよりもっととんでもないかもしれない」と表現していますので、圧倒的な強さを感じているのにも関わらず、過去に感じたベジータとの気の大きさの比較は難しいということになります。
フリーザの気の大きさを感じたのは一瞬で、すぐに距離が離れていってしまったというのもありますが、ベジータの気を感じたのは1か月以上前のため、記憶があいまいになってしまっているものあると思われます。
つまり、それくらい気の感知と比較というのは難しいという事なのでしょう。
フリーザ親子が地球に襲来するシーン
次の事例はメカフリーザがコルド大王を引き連れて地球に襲来するシーンです。
この時、フリーザ親子が地球に接近してきていることは、フリーザ親子がまだ宇宙空間にいる時点で、クリリン、悟飯たちは感知しています。
さらには宇宙船のおおよその着陸地点も割り出しています。
しかし、あくまで「この気はフリーザじゃないのか?」という疑問を提示していて、確証まではないようです。
重要なのはフリーザ親子を乗せた宇宙船が大気圏を通過し、クリリンたちの前に姿を現したシーンです。
目の前を宇宙船が通り過ぎた後、クリリン、悟飯、ベジータ、ピッコロなどのナメック星でフリーザと戦ったメンバーは、気の持ち主がフリーザであることを確信しています。
そして、ナメック星に行っていないいヤムチャや天津飯は、この時に初めてフリーザの気がとんでもなく巨大であることを知って驚愕しています。
この事例をみても対象との距離が離れていると、気の大きさを正確に感じ取ることができないということが分かります。
ギニュー特戦隊がナメック星に接近するシーン
次の事例はギニュー特戦隊がナメック星に接近するシーンです。
ザーボンの不甲斐ない行動に業を煮やしたフリーザはギニュー特戦隊を呼び寄せていましたが、クリリン、悟飯が最長老様のところにいる時にやってきました。
そして、ベジータがギニュー特戦隊の恐ろしさを力説し、一緒に手を組むことを提案します。
その際に、最初は躊躇していたクリリンたちもネイルの以下の言葉もあり、ベジータの提案を受け入れることになります。
注目すべきは「邪悪な大パワーが5つ」と言っていることです。
後の明らかになることですが、5人のギニュー特戦隊の中でグルドだけは戦闘力が際立って低くなっています。
グルドには超能力という特殊能力があり、その力を認められて特戦隊に加えられたようですが、この時点でネイルたちはそんなことは知る由もありません。
単純にギニュー特戦隊の気を感じての評価です。
今さらいう事でもないですが、ネイルの戦闘力は42,000です。
そのネイルが「邪悪な大パワーが5つ」と言っているのです。
つまり、距離が離れていると一人だけ戦闘力が低い、グルドの気も他の特戦隊メンバーの気と紛れてしまい、数だけしか数えられなくなってしまうとういことです。
さらに、クリリンも宇宙空間にいる特戦隊の気を感じていましたが、目の前にきて初めてその期の大きさを感じ取り、ベジータの言っていたことは本当だったと確信しています。
このことからも、いかに気の感知能力の精度が低いかということが分かります。
ラディッツ襲来時の悟空とピッコロの行動
最後の事例はラディッツが地球にやってきたシーンをいくつかご紹介します。
ラディッツは地球に降り立った後、まずはピッコロ、そして悟空のところに向かいます。
その時のシーンがこちらですが、ピッコロはラディッツが近くに接近するまでその存在に気づきませんでした。
そして、同様に悟空もラディッツがカメハウスのそばまで来た段階でようやく、大きなパワーが近づいてきていることに気づいています。
このシーンだけでも距離が離れると気の大きさが感じ取れなくなることは明白なのですが、さらに極めつけとして、ラディッツが悟飯を連れ去った後、ピッコロと手を組んでラディッツに行くシーンに注目です。
この時、悟空たちはラディッツの位置を気で感知できず、なんとドラゴンレーダーで悟飯のドラゴンボールの位置を特定しているのです。
つまり、この時は気の大きさだけでなく、ラディッツの気そのものを感じ取れていないということになります。
気で相手の場所を特定できるにはどれくらいの大きさが必要?
ここまで考察を続けてきて、ドラゴンボールでは距離が離れると気の大きさを正確に把握できなくなるということが分かりましたが、それと同時に新たな疑問が立ち上がりました。
ラディッツの場合は、距離が離れると気の大きさを正確に把握どころではなく、存在そのものを感知ができなくなっているのです。
しかし、ナメック星ではクリリン、悟飯がフリーザ軍の位置やナメック星人たちの気を感じ取っていますので、矛盾が生じてしまっています。
これを設定上の矛盾と片づけてしまう事もできるでしょうが、論理的に考察をするとある程度筋の通った解釈が可能となります。
つまり、ラディッツ単体の気の大きさでは距離が離れてしまうと、存在そのものを検知できなくなってしまうという事なのでしょう。
これを裏付ける事例としては、ベジータ、ナッパが地球に襲来したシーンがあります。
ベジータ、ナッパが地球に降り立った時は、ラディッツの時と違い、地球の戦士は全員2人の存在を気によって検知していました。
このことからわかることは、少なくともナッパ、もしくはベジータ程度の気の大きさがあれば、星のどの場所にいても気で検知できるという事です。
そして、この事実はナメック星編のクリリン、悟飯がフリーザ軍やナメック星人たちの位置を感じ取れたことと矛盾しません。
フリーザ軍にはザーボンやドドリアなどの当時のベジータ以上の実力者がいますし、何よりフリーザ自身がいるのですから、気の大きさとしては問題ありません。
ナメック星人は単体としてみた場合、若者は戦闘力3000あるものの気を抑えていたり、村から一時的に離れていたようですから若干整合性に欠けると思われるかもしれません。
しかし、これもある程度の気の大きさが一か所に集まると、個数はカウントできるものの一塊の大きな気として感じ取れてしまうという特性を考えれば矛盾が解消されます。
このことは、ギニュー特戦隊のグルドの気が他の4人の特戦隊メンバーの気と紛れてしまったことからも分かります。
そして、おそらくですがギニュー特戦隊クラスの戦闘力になると、宇宙空間にいる状態でも気を感じ取れるようになるのでしょう。
気の正確な検知にはスーパーサイヤ人以上の気の大きさが必要?
ここまでの考察で、距離が離れると気の大きさが正確に把握できなくなるということと、一定の戦闘力を下回ると距離が離れると存在すら検知できなくなるということが分かりました。
しかし、実は上記に当てはまらない事例が人造人間編以降で確認できるのです。
それは、ピッコロが神様と合体し、再びひとりのナメック星人に戻った後、セルの第一形態と闘った時のことです。
闘いの後、ピッコロの元にベジータも駆けつけますが、どうやらベジータは遠くから二つの気の衝突を感じていたようで、片方の気の大きさが自分以上だと感じ取れていたようなのです。
これはどういうことでしょうか?
これまでの考察において、距離が離れると正確な気の大きさを感じ取るのは難しいはずです。
しかし、この時のベジータはピッコロの気の大きさをかなり正確に感じ取り、自分と比較までしています。
また、悟空が魔人ブウの足止めをする際に、スーパーサイヤ人2に変身をしたシーンでは、チビトランクスが悟空の気の大きさを距離が離れた状態で感じ取り、ベジータと比較して同じくらいと表現しています。
この2つの事例に共通することは、対象となる相手の気の大きさがスーパーサイヤ人以上だということです。
おそらく、スーパーサイヤ人以上の気の大きさになると、距離が離れていても気の大きさを正確に感じ取れるようになるのだと思われます。
また、スーパーサイヤ人3ほどの気になると、遠く離れた界王神界にまで届き、さらには気の大きさも感じ取れています。
このことから気の大きさは届く距離にも影響することが分かります。これまでの考察でギニュー特戦隊クラスの気の大きさになれば宇宙空間にいても気が届くことは立証済ですので、筋の通った解釈となります。
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