ドラゴンボール 第52話のあらすじ考察「クライマックス近し!!」

ストーリー
引用元 ドラゴンボール 集英社

其之五十二のサブタイトルは「クライマックス近し!!」です。前話のラストで、ジャッキー・チュンは最大出力のかめはめ波を大猿に向けて放ち、爆煙が晴れたあと、クリリンは悟空が死んだと叫びました。この回は、その叫びの続きから始まります。

ところが、ジャッキーが撃ち抜いたのは悟空ではありませんでした。夜空から消えていたのは、月そのものだったのです。全裸で目を覚ました悟空、道着を貸すクリリン、そしてかめはめ波を撃てなくなった老人。決勝戦は大猿騒動という「災害」をくぐり抜け、ふたたび武道の試合へと戻っていきます。

其之五十二「クライマックス近し!!」のあらすじ

爆煙がおさまった武舞台で、アナウンサーはジャッキー・チュンの優勝を告げようとします。クリリンは、悟空を殺したジャッキーを人殺しだと責め立てます。ところがジャッキーは、がれきの山を指さしました。そこには、もとの姿に戻った悟空が裸のまま横たわっていたのです。悟空が生きていたことに、誰もが驚きます。

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ジャッキーは、かめはめ波で吹き飛ばしたのは悟空ではなく月だったと明かします。夜空を見上げたアナウンサーは、月がなくなっていることに仰天し、もう月を眺めながら団子を食べることもできない、狼男も変身できなくなってしまう、と風流が失われたことを嘆きはじめます。

ジャッキーにそんなことより早くカウントを取れと急かされ、アナウンサーがカウントを始めると、悟空はツーで起き上がります。自分がなぜ裸なのかは分からないものの、悟空は気にせずジャッキーと向き合います。一方のジャッキーは、月を壊したかめはめ波で力を使い果たしてしまったことを悔やんでいました。

さすがに裸のままでは試合を続けられないと、アナウンサーは試合をいったん中断し、悟空に服を着てくるよう頼みます。武舞台に上がってきたクリリンが自分の道着を貸すと申し出て、二人は控え室へ向かいます。クリリンは代わりに、かつての多林寺の服に着替えました。

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武舞台に戻った悟空は、腹が減って力が出なくなっていると感じています。ジャッキーはとどめのかめはめ波を撃とうとしますが、何も出ません。それを見た悟空は、かめはめ波が撃てないなら、ジャッキーは空も飛べないはずだと気づきます。悟空が自分のかめはめ波を放つと、ジャッキーはジャンプしてぎりぎりでかわしますが、悟空はそのすきを逃さず飛び蹴りを決め、ジャッキーは武舞台の外へ落ちていきました。

誰もが悟空の勝利だと思ったその瞬間、ジャッキーはよく見ろと言います。左足を武舞台の側面にかけ、地面からわずかに浮いた状態で踏みとどまっていたのです。場外負けではないため、試合は続行されます。

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武舞台に戻ったジャッキーは、ここから先は純粋な格闘で、強いほうが勝つと宣言します。絶対に負けないと意気込む悟空。その小さな体を見ていたジャッキーは、何かに思い当たります。そして二人は、互いに向かって飛び出していくのでした。

「ただひとつの方法」の正体──ジャッキーが狙ったのは月だった

前回の記事で、ジャッキーが決断したのはヤムチャから「悟空は満月を見ると怪物になる」と聞いた直後だった、という点に注目しました。この回で、その布石がはっきりと回収されます。ジャッキーが選んだ「ただひとつの方法」とは、変身のきっかけである月そのものを消すことでした。

ヤムチャの策と比べると、この判断の意味がよく分かります。シッポを切る方法は、ピラフ城で一度成功した確実な手段でした。しかし、暴れる大猿の背後に回り込まなければ実行できません。一方、月は空に浮かんでいるので、近づく必要がまったくありません。武舞台から降りられないジャッキーにとって、その場から撃つだけで済む月は、もっとも確実に当てられる標的だったわけです。

しかも、この方法には悟空を傷つけずに済むという大きな利点があります。かめはめ波の最大出力を大猿に直撃させれば、悟空の命が危うかったはずです。ジャッキーは悟空に一切の攻撃を加えず、原因だけを取り除きました。悟空ががれきの中から無事な姿で見つかったのは、ジャッキーが最初から悟空を撃つつもりがなかったからです。クリリンやヤムチャ、そして読者までもが「悟空を撃った」と思い込んでいたのは、ジャッキーが空を見上げていたことに誰も気づかなかったからでしょう。

もっとも、そのスケールは途方もないものです。武道家がひとりで天体を消し去ってしまうのですから。現実の視点で考えれば、潮の満ち引きをはじめ地球全体への影響は計り知れません。ところが、作中でアナウンサーが真っ先に嘆いたのは、月見団子と狼男でした。ここが鳥山先生らしいところで、とんでもない出来事を「風流がなくなった」という庶民的な感覚で受け止めることで、深刻な話にせず笑いへと変えています。

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ただ、このギャグは単なる一発ネタでは終わりません。後の第22回天下一武道会では、月を壊されて人間の姿に戻れなくなったと恨む男狼が、ジャッキー・チュンの前に立ちはだかります(其之百十九「満月の恨み」)。アナウンサーの何気ないぼやきが、3年後の対戦カードにつながっていくのです。

全裸の悟空と多林寺の服──試合を続けるための「段取り」

大猿から戻った悟空が裸になっているのは、ピラフ城のときと同じです。変身で体が巨大化すれば、着ていた服は破れてしまいます。悟空自身は裸であることをまったく気にしていませんが、さすがにアナウンサーは見過ごせませんでした。

前回の記事では、アナウンサーが大混乱のなかでも職場を離れず、「試合」という枠組みを守り続けていたことに触れました。この回でも、その姿勢は変わりません。悟空が起き上がるまでカウントを取り、試合を続行できる状態を確認したうえで、服を着るための中断を宣言する。会場が半壊していても、手順はきちんと踏まれています。前回「次回に持ち越される」と書いた、騒動後の勝負の扱いについての答えがこれです。決勝戦は無効にも中止にもならず、カウントと中断をはさんで、そのまま続行されました。

そして、ここで動いたのがクリリンです。ほんの少し前まで、ジャッキーを人殺しと呼んでいたクリリンが、悟空の無事を知るとすぐに武舞台に上がり、自分の道着を差し出しました。代わりに着たのは多林寺の服です。クリリンが初めて登場したとき、亀仙人に弟子入りを願い出たのは多林寺の修行僧としてでした。亀仙流の道着を兄弟弟子に譲り、自分は入門前の服に戻る。何気ない着替えの場面ですが、クリリンにとって悟空がどれほど大切な仲間になっていたかがよく表れています。

それにしても、亀仙流の道着を着た悟空が武舞台に戻り、それを貸したクリリンが多林寺の服で応援する。決勝戦の終盤に、二人が出会う前の時間が一瞬だけ顔をのぞかせているのは、なかなか味わい深い光景ではないでしょうか。

空中では逃げられない──其之四十七の教訓を返した悟空

この回でいちばん見応えがあるのは、試合が再開されてからの攻防です。ジャッキーはとどめのかめはめ波を撃とうとしますが、何も出ません。月を吹き飛ばした最大出力で、力を使い切っていたのです。

ここで悟空が気づいたことが重要です。かめはめ波が撃てないなら、ジャッキーは空を飛べない。思い出してほしいのは、其之四十三のクリリン戦です。場外に落ちかけたジャッキーは、かめはめ波を下に向けて撃ち、その反動で武舞台に戻りました。悟空も其之四十七で、ジャッキーがかめはめ波を使って飛んでいたことを口にしています。悟空はジャッキーの空中での動きの「からくり」を、ちゃんと覚えていたわけです。

そして、空中にいる相手を狙うという発想そのものも、ジャッキーから教わったものでした。其之四十七で、悟空はジャッキーの攻撃をジャンプしてかわしましたが、ジャッキーは後方宙返りで空中に飛び上がり、身動きの取れない悟空を蹴り飛ばしています。空中に逃げた者は、次の攻撃をよけられない。悟空はこの回、その教訓をそっくりジャッキーに返しました。かめはめ波で相手をジャンプさせ、身動きの取れなくなったところへ飛び蹴りを叩き込んだのです。

この流れには、二重の皮肉があります。ひとつは、ジャッキーが悟空に見せた戦法で、ジャッキー自身が追い詰められたこと。もうひとつは、悟空を救うために月を撃ったかめはめ波が、そのままジャッキーから空中での逃げ道を奪ったことです。悟空を傷つけずに大猿を止めるという選択の代償を、ジャッキーはこの攻防で支払うことになりました。

戦いのなかで相手の技を覚え、それを自分のものにして返す。これは亀仙人が「試合」を通じて悟空に伝えたかったことそのものでもあるはずです。正体を隠して弟子と戦うジャッキーにとって、自分の戦法で追い込まれたこの瞬間は、師匠として悔しくも嬉しい場面だったのかもしれません。

片足一本の粘り──場外負けのルールはここでも生きている

飛び蹴りを受けたジャッキーは武舞台の外へ落ち、誰もが悟空の勝利を確信します。しかしジャッキーは、左足を武舞台の側面にかけ、地面からわずかに浮いたところで踏みとどまっていました。

前回、ジャッキーは大猿を前にしても、逃げたら場外負けになると言って武舞台を離れませんでした。この回では、その場外負けのルールが、今度は自分を救う側に回っています。ルールに縛られていたジャッキーが、ルールの細部を利用して首の皮一枚で生き残る。天下一武道会のルールが、この決勝戦ではずっと物語の緊張感を支え続けていることが分かります。

同時に、この粘りはジャッキーの余力のなさも示しています。かめはめ波で飛ぶことができれば、こんな際どい踏みとどまり方をする必要はありませんでした。月を壊す前のジャッキーなら、悠々と武舞台に戻れていたはずです。足一本で地面をこらえる姿は、達人の妙技であると同時に、追い詰められた老人の必死の抵抗でもありました。

武舞台に戻ったジャッキーが、ここからは純粋な格闘で決着をつけると宣言したのも自然な流れです。悟空は空腹で力が抜け、ジャッキーはかめはめ波を撃ち尽くしている。もはやどちらにも大技は残っていません。残っているのは、体ひとつで戦う武道の基本だけです。

そして最後に、ジャッキーは悟空の小さな体を見て、何かに思い当たります。この気づきが何なのかは、この回では明かされません。ただ、技も変身も出尽くした決勝戦が、最後は体格という、もっとも根本的な要素で決まろうとしていることを予感させる幕切れになっています。

おわりに

其之五十二は、前回の「悟空が死んだ」という叫びを、ひとつずつ解きほぐしていく回でした。ジャッキーが撃ったのは月であり、悟空は無事で、決勝戦はまだ終わっていない。ヤムチャがシッポに、ジャッキーが満月に解決策を求めたという前回の対比は、月そのものを消すという大胆な答えによって決着しました。

その一方で、月を撃ったかめはめ波は、ジャッキーから空を飛ぶ力を奪います。悟空は其之四十七で教わった「空中では逃げられない」という教訓をそのまま返し、ジャッキーは場外負けのルールの細部にしがみついて生き残りました。大技が出尽くした二人に残されたのは、体と体のぶつかり合いだけです。

サブタイトルのとおり、クライマックスはもう目の前です。ジャッキーが悟空の小さな体に見出したものは何だったのか。そして、第21回天下一武道会の優勝者は誰になるのか。次回、其之五十三「クライマックス」で、長かった決勝戦にいよいよ決着がつきます。

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