フリーザ軍は宇宙の不動産屋なのか?

設定の考察
引用元 ドラゴンボール 集英社

ラディッツの説明によるとサイヤ人は、異星人と結託して高値で売れそうな星の原住民を滅ぼして売りさばいているとのことでした。
そしてこの「異星人」がフリーザ軍を指しているのか、フリーザ軍が取引している別の宇宙人を指しているのかによっても多少解釈が変わりますが、ネット等の多くの人は後者と考えているようです。
フリーザ軍は星を売買する不動産業のようなものを営んでいるとする説はこうした考え方を元にしているようです。

しかし、私は前者の「異星人」はフリーザ軍のことを指していて、フリーザ軍は宇宙の不動産屋のような存在ではないと考えています。
この記事ではその理由をひとつひとつ説明していくとともに、フリーザ軍は何を目的に宇宙の星々を侵略していっているのかを考察したいと思います。

フリーザ軍が宇宙の不動産屋とされる理由

前段で簡単に説明しましたが、まずはなぜフリーザが宇宙の不動産屋とされるかについて考えていきたいと思います。
理由としてはやはり、ラディッツやベジータなどのサイヤ人が地球を値踏みして、「高値で売れなくなる」などの発言をしていることがあげられます。

引用元 ドラゴンボール 集英社

ベジータやナッパはフリーザ軍に所属していますので、この「高値で売れなくなる」というセリフの主語は当然フリーザ軍になります。
つまり、この後ベジータたちは地球人を全滅させた後、地球をフリーザに献上し、フリーザ軍はそれをどこかの異星人に売りつけるという構図です。

フリーザが星の売買をする目的は?

確かにフリーザ軍を宇宙の不動産屋として考えた場合、ベジータたちサイヤ人はその社員という事になりますので、一見上記のセリフに矛盾はないように思えます。

しかし、その場合、フリーザ軍が異星人たちと星の売買行為をする目的はなんなのかという疑問が残ります。
星を売るという事は何らかの理由で星を買い取る必要がある異星人がいて、対価として金銭をフリーザ軍に対して支払っているという事になりますが、宇宙に共通の通貨があるのでしょうか?
共通の言語があるのだから共通の通貨があってもおかしくないという考え方もできるかもしれません。
しかしことはそう単純ではありません。
問題はフリーザにそのような商行為をしてまで金銭を得る必要があるのかということです。
その気になれば、力づくですべてを手に入れることができるのに、わざわざ面倒な商取引をする理由がフリーザにあるとは思えません。

もちろんフリーザが単純な独裁者ではなく、組織的な運営を志向していることはあきらかです。
以下の記事でも関連して、フリーザ個人についての考察をしています。

ですが、組織的な運営をしているということと、私たち現代人がイメージするような商取引を行うことはイコールではありません。

フリーザ軍が宇宙の不動産業ではありえない理由

では、フリーザが宇宙の星を攻め滅ぼしいっている目的とは一体なんでしょうか?
その答えはベジータが地球から惑星フリーザに逃げ帰った際のコマから想像ができます。

引用元 ドラゴンボール 集英社

「惑星フリーザNo.79」と書かれています。
つまり、上記のようなフリーザの拠点となる星は最低でも、あと78個はあることになります。
もし、フリーザが異星人と星の売買行為を行っているとしたら、売却できずにいる星が大量に残っていることになります。
当然、売れ残っている星の維持管理費もかかってくるでしょう。
また、これだけ星が売れずに残っているということは、それだけ星を必要としている異星人が少ないということを指していることにもなります。
星を購入してまで欲しいというのは、自分たちが住んでいた星を何らかの災害によってなくしてしまった種族や、亡命のような形で脱出した人たち、もしくは人口増加によって新たに住む星を増やす必要がある種族などが考えられるでしょうか。
しかし、この中でフリーザ軍と金銭のやりとり(共通の通貨があると仮定して)ができそうなのは、最後の新たに住む星を増やす必要がある種族だけでしょう。
そんな種族がそうそうたくさんいるとは思えません。つまり宇宙の不動産業というのは、ビジネスモデルとして成立しない可能性が高いのです。

滅ぼした星はフリーザの直轄領だった

ではフリーザ軍がビジネス目的で星の侵略を行っているのではないとしたら、本当の目的はなんなのでしょうか?
そもそも、このような誤解が生まれてしまうのは、現代の私たちの商慣習をそのままフリーザ軍に当てはめてしまうからだと思われます。
前述したようにフリーザがわざわざ異星人と商取引という手段で、金銭を手に入れる必要があるとは思えません。
フリーザは組織的運営を志向していて、組織の持続的な運営に資金が必要だとしても、それをわざわざ商取引で得る必要がないのです。

では、ベジータやラディッツが星の売買に関して言及していた事実はどう解釈すればよいのでしょうか?
この謎はラディッツがいっていた「異星人」というのをフリーザ軍ととらえることで解決します。
攻め滅ぼした星は第三者の異星人に売りつけるのではなく、フリーザ軍に献上し、報酬をもらっていたのでしょう。そして報酬をもらうことを「高値で売れる」という表現をしていたのだと考えられます。その報酬はフリーザ軍内のみで使用できる通貨や食料、さらには軍内での地位といったものも含まれているかもしれません。

地球のように高度な経済社会が発達しているのであればともかく、多くの星々では強いだけでは生きていくのもままならないでしょう。
それがフリーザ軍に所属すれば、強さが正義であり、衣食住だけでなく地位や名誉も手に入ります。
元々サイヤ人も単なる野蛮な種族であったが、公式設定でフリーザ軍と結託することで大きく繁栄をしてきた歴史があります。
また、サイヤ人のように戦闘力が高い種族でなくても、一般兵として貢献することで衣食住を確保するというケースの方が多いでしょう。
ある意味、宇宙の雇用確保的な意味合いもあったのかもしれません。

またサイヤ人のように武力ではなく、高度な科学技術を提供することでフリーザ軍に協力する種族もいたはずです。
これは、フリーザ軍が武器や防具、スカウターなどの戦闘に必要な装備品を一般兵にも支給していたり、メディカルマシンのような設備を備えていたりといった描写からも想像できますね。

そして、ここからフリーザ軍の本当の目的もみえてきます。
一言で言ってしまえば、フリーザが星の侵略を行う理由は、宇宙における自分の領土を拡大するためだと思われます。
ナポレオンやチンギスハン、帝国主義時代の欧米諸国や日本をイメージするのが分かりやすいでしょう。
そう考えれば、惑星フリーザがNo.79まである理由の説明もつきます。
これはつまり、フリーザ軍の植民地としての直轄領が79個あるということだと思われます。

先ほど宇宙の雇用確保ということをいいましたが、そのようにフリーザ軍に所属して働けるのはほんの一部で、実際にはフリーザ軍の持続的な組織運営のために奴隷的な扱いを受けたり、単純に虐殺されたりといったことがほとんどだったでしょう。

結論としてフリーザは宇宙の不動産屋などではなく、コンキスタドールというのが真実だと思われます。

ラディッツのセリフを再検証

上記のように一応の結論は出したものの正直に告白すると論理に穴があります。

引用元 ドラゴンボール 集英社

それは、地球でのラディッツのセリフを詳細に確認するとラディッツが言っている「異星人」はフリーザ軍ではなく、フリーザ軍と取引している宇宙人というように解釈できます。
このあたりのストーリーを広げるために、ドラゴンボール超でもフリーザ軍に侵略する星をあっせんするブローカーとしてヒータたちが描かれていましたね。

ですが、異星人をフリーザ軍ではないとしてしまうと色々と不都合がでてくるのも事実です。
何より大きな疑問として、ドラゴンボール超のように仮にビジネスとしてフリーザが星の売買を行っているとしてしまうと、その気になれば暴力ですべてを手に入れられるフリーザが、自身の支配を超えた経済圏に属していることになってしまいますし、その経済圏をコントロールしているのは誰だというこになります。

たとえばフリーザはナメック星でドラゴンボールを手に入れるのに、ただで譲り受けられないならば殺して奪っていました。
つまり購入ではなく譲渡を迫っていたことになります。
もちろんナメック星は遅れている星でフリーザが属している経済圏に入っていないからだと考えることもできますが、同じ経済圏に属していて適当な星を求めている宇宙人などというものがそうたくさんいるものでしょうか?

また、前述したように惑星フリーザNo.79のように大量の星を売却せずに自身で保有しているという事実もあります。
これらのことから、上記の事象とラディッツのセリフを矛盾なく解釈するためには、フリーザが星を侵略しているのは自身の支配圏を広げるため。
しかし、まれに人口問題や亡命などの理由で新たな星を必要としている異星人に対して、フリーザがコントロールする経済圏に入り、食料や武器、科学技術などを提供させる契約を交わしたと解釈するのが妥当だと思われます。
このことをラディッツは「異星人に高く売る」と表現していたのでしょう。

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