ドラゴンボールの戦闘力を議論する際に必ず出てくるのが公式のファンブックに記載されている数字です。
原作のドラゴンボールには明確に戦闘力が描かれていたなかったり、人造人間編以降ではそもそも戦闘力という概念が登場しなくなってしまったこともあり、読者が「この時のこいつの戦闘力はいくつなんだ?」と疑問に思ったり考察をしたりするのは自然なことだと思います。
それに対して、集英社出版によるドラゴンボール大全集やジャンプの付録などの公式のファンブック等により、原作は描かれなかった戦闘力が書かれていました。
この大全集等による戦闘力数が原作の描写との整合性がとれていればいいのですが、何を根拠にこの数字になったのか理解に苦しむようなものが多いのが実情です。
そこで今回の記事では、ジャンプの付録に掲載されていた戦闘力設定集の妥当性を検討していきたいと思います。
悟空の戦闘力
悟空の戦闘力は3つ記載されています。
一つ目は少年期の戦闘力180です。
年齢は15歳と書いてあることから第22回天下一武道会からピッコロとの戦いまでの戦闘力と思われますが、天下一武道会時とピッコロを倒した時点ではかなり戦闘力が違うはずですので、どちらと断定するのは難しいですが、感覚的には天下一武道会時のものとした方が近いですね。
なぜなら、ラディッツを倒した後、ブルマがスカウターでクリリン、ヤムチャ、天津飯、亀仙人の戦闘力を計測していますが、ヤムチャの戦闘力は177のようです。
ということは、この悟空の戦闘力180を初代ピッコロ撃破時点としてしまうと3年後のヤムチャは、初代ピッコロを倒せるくらいの実力を持っていたことになります。
それはさすがにありえないだろうということで、私は天下一武道会時点のものとした方が自然だと考えています。
とはいえ、人によって感覚も違いますし、根拠となる基準値がこの当時はないのですから、憶測の域を出ません。
どちらであって全くあり得ない数字ではないので、一旦は議論の対象外とするしかにでしょうね。
残り二つはラディッツ戦時点の910(原作内の数字は924)、ベジータ、ナッパ襲来時の8,000以上ですが、どちらも原作内に記載されている数字です。
そのため、議論の余地なく確定としたいのですが、ラディッツ戦時点の910(原作内の数字は924)は注意点があります。
実はこの数字は悟空がかめはめ波を撃った時に瞬間的に気を一点に集中して高めた時のものなんですよね。
もちろん、それだって悟空の戦闘力には違いないのですが、ナッパ戦の時の戦闘力を5,000から8,000に増幅させた時違って、910(原作内の数字は924)の戦闘力で戦闘ができるわけではないという事です。
あくまで、全身の気を両手のひらに集めた結果、スカウターがその数字を計測したら910だったという事です。
例えるなら、体中の脂肪を寄せ集めて胸の谷間を作るイメージでしょうか。
このような一か所に気を集めて戦闘力を大きく見せるテクニックはラディッツをはじめとしたフリーザ軍にはできない芸当ですので、驚愕したという事ですね。
このあたりの気と戦闘力の関係性は非常に複雑です。
別の記事に詳しくまとめていますので、興味のある方はぜひご一読ください。
悟飯の戦闘力
悟飯の戦闘力は2,800と記載されています。
これはいうまでもなくナッパの時の戦闘力を基にしています。原作にもしっかりと書かれている数字ですので、疑いようがない戦闘力です。
しかし、これも前述の悟空のかめはめ波の戦闘力と同様に魔閃光を放った瞬間的な数字だという事には留意しておく必要があります。
さらに悟空の時と違い、この時の悟飯は魔閃光を放った後すべての力を使い果たし、ガクッと戦闘力が落ちてしまっています。
そのため、この数字を悟飯のこの時点の戦闘力とするのには私は疑問を感じます。
悟飯の戦闘力に限らず、このジャンプの付録を作成した編集者はなるべく数字を大きく見せようという意図が感じられますね。
読者が小中学生が中心だったことを考えると、数字が大きい方が受けがいいはずですので、当然と言えば当然かもしれませんが、改めて現時点で冷静に考察する際には注意した方がよいところでしょう。
ピッコロの戦闘力
実はこのジャンプの付録の中で一番怪しい戦闘力がこのピッコロの3,500という数字です。
まず大前提としてこの数字はナッパ戦の時の戦闘力を想定していると思われますが、原作内には3,500という数字はいっさい出てきません。
原作内に書かれているこの時点のピッコロの戦闘力は1,220です。
もちろんこの戦闘力は平常時のもので、パワーだけならラディッツと互角とされるサイバイマンを瞬殺していることから、ピッコロの最大戦闘力はもっと高いのは確定しています。
しかし3,500という戦闘力はちょっと高すぎる気がしますね。
もしピッコロの戦闘力が本当に3,500だとしたら、悟飯の戦闘力2,800より大きいわけですから、スカウターをしているベジータが何らかの反応を示してもいいはずです。
なぜジャンプ編集者は原作内に一切記載のない3,500という数字にしたのか。そこには何らかの理由があるはずです。
おそらくですが、これは悟飯の魔閃光を放った時の戦闘力2,800という数字に影響されているのではと思われます。
ピッコロは悟飯に戦い方を教えた師匠です。もし、ピッコロの戦闘力を2,800以下としてしまうと、ピッコロは弟子である悟飯以下という事になってしまい、かっこがつきません。
つまりジャンプ編集者はピッコロファンの子どもたちに対して忖度して、3,500という数字を設定したのではないかと思われるのです。
しかし、ここまで考察してきてなんですが、実はこの3,500という戦闘力数には全く根拠がないわけでもありません。
この数字を魔貫光殺砲を放つときに限定した場合は、3,500という数字は妥当なものとなります。
ラディッツ戦でピッコロが魔貫光殺砲を放った時の指先に集まった気の戦闘力は、1,330でした。これは平常時戦闘力408の約3倍になります。
そして3,500という戦闘力は、ナッパ戦の平常時戦闘力1,220の約3倍です。
つまり、魔貫光殺砲は平常時戦闘力の約3倍の気を指先に集めることができる考えれば、3,500という数字も納得がいくものになるのです。
とはいえ、ナッパ戦でピッコロは魔貫光殺砲を使っていません。
使用しなかった理由は、魔貫光殺砲という技が威力自体は大きいものの気をためるのにもの凄い時間がかかってしまうという弱点があったからでしょう。
ラディッツ戦でも悟空がラディッツを羽交い絞めにしてくれていたからこそ命中しましたが、一発目は技の発動後に見てからラディッツは回避しています。
加えて最大で二発しか打てないほど気を大きく消費するようですので、これほど費用対効果が悪い技もありません。
ではなぜジャンプ編集者は、ナッパ戦で使用すらされなかった魔貫光殺砲限定の戦闘力数をわざわざ書いたのかというと、やはり前述した悟飯の戦闘力を下回るとピッコロさんのかっこがつかなくなるという事情があったからでしょう。
余談ですが、ナッパ戦でピッコロは魔貫光殺砲と似たような技を使用しています。
魔貫光殺砲と違い、この技は両手のひらから放出しているものの、魔貫光殺砲と同様に中心のエネルギー砲の周りをぐるぐるとらせん状に小さなエネルギー砲が回転しています。
しかも魔貫光殺砲のような気の溜め動作なしで出していることから、おそらく魔貫光殺砲より威力、貫通力が低いものの発動時の隙をなくした魔貫光殺砲の改良技なのでしょう。
ナッパとラディッツの戦闘力
次にナッパとラディッツの戦闘力を見ていきましょう。
まずはナッパです。ナッパの戦闘力は4,000とされていますが、この数字もピッコロと同様に原作内には一切記載がなく、ジャンプ編集者の何らかの意図を基に設定されたものになります。
このナッパの戦闘力4,000という数字は原作内には一切の記載がないのにもかかわらず、広くドラゴンボールファンの間では定着しているのですが、その一方4,000という数字を否定する意見も少なくありません。
ナッパの戦闘力を4,000としてしまうと、原作内の描写やキャラクターのセリフとの整合性が取れなくなってしまうため、実は6,000~7,000はあったのではないかと言われているのです。
このあたりの事情については、こちらの記事で詳しく考察していますので、興味のある方はぜひご一読ください。
さて次はラディッツの戦闘力を見ていきましょう。
ラディッツの戦闘力は1,500とされています。この数字も原作には記載がありません。
しかし、この数字はある程度の根拠があり、実に絶妙なものになっています。
一つ目の根拠はナッパのセリフです。サイバイマンの戦闘力は1,200とのこと。
そして、「パワーだけならラディッツと匹敵する」そうです。この「パワーだけなら」というところが味噌でしょう。
もし、戦闘力がラディッツと互角なら、「サイバイマンの戦闘力はラディッツと互角」というはずです。
つまりサイバイマンはパワーこそラディッツにも引けを取らないが、総合的な戦闘力はラディッツの方が上だというように解釈が可能なのです。
上記の考察をもとにするとラディッツの戦闘力が1,500というのは、なかなかいい線をついているといえるでしょう。
しかし、1,500という数字に対してまったくの疑問がないわけでもありません。
ラディッツの戦闘力を総合的に検証するには、この時戦った悟空やピッコロ、そして悟飯の戦闘力も考慮する必要があります。
まず、悟空の平常時戦闘力は416。かめはめ波限定で924。ピッコロは平常時戦闘力408、そして魔貫光殺砲を放った時は瞬間的に1,330を記録しました。
悟飯はというと平常時は1であるものの感情の高ぶりによって710、さらに悟空のピンチの時は1,307まで上昇しました。
注目すべきはこのピッコロの魔貫光殺砲の戦闘力1,330、悟飯の1,307という数字に驚愕の色を覚醒ない様子や、実際に悟飯の頭突きによって大ダメージを受けたこと、魔貫光殺砲をくらって死んでしまったことです。
もし、ラディッツの戦闘力が1,500もあったら、それよりも低い1,300程度ではダメージを受けることはないんじゃないかとも考えられるからです。
つまり、ラディッツの戦闘力は1,200程度が妥当なのではということですね。
しかし、私は前述のナッパのセリフを根拠としてラディッツの戦闘力は1,500、最低でも1,300はあってもいいと考えています。
では、悟飯の頭突きによってダメージを受けたことや、魔貫光殺砲をくらって死んでしまったことはどう考えればいいのでしょうか?
これは、まず魔貫光殺砲はその戦闘力としての威力だけではなく、技の特性として貫通力に特化した技だという事を考慮する必要があります。
そのため、格上の相手に対しても有効だということですね。
そして、悟飯のタックルによるダメージは、子どもでありながら1,300などという自分に匹敵する数値に驚愕しすぎて油断していたところにタックルをくらってしまったことが原因なんじゃないでしょうか?
つまり防御がおろそかになってしまったという事ですね。
若干苦しいですが、このくらいしか説明のしようがないですね。
ということで、ラディッツの戦闘力はナッパのセリフや悟空たちとの戦闘シーンの描写から総合的に判断して、1,300~1,500くらいとするのが妥当なところでしょう。
クリリン、ヤムチャ、天津飯、餃子、ヤジロベーの戦闘力
次はクリリン、ヤムチャ、天津飯、餃子、ヤジロベーの戦闘力をまとめて検証していきましょう。
クリリンは1,770、ヤムチャは1,480、天津飯は1,830、餃子は610、ヤジロベーは970となっています。
餃子だけ際立って低いですね。まあ、それでも1年前の悟空やピッコロ以上の戦闘力なのですから、大したものですが。
他の戦士たちの戦闘力はヤジロベーを除いて全員1,000超えとなっており、ラディッツの戦闘力が1,300~1,500と推定できることから、かなりのレベルアップを果たしていることが分かります。
しかし、これらの戦闘力は平常時の戦闘力かというとそうではないようです。
ベジータ、ナッパがピッコロ、悟飯、クリリンの前に姿を現した時に3人の戦闘力を計測していますが、それぞれ、1,083、1,220、1,083となっています。
1,220がピッコロなのは確定として、1,083、981がどちらが悟飯でクリリンなのかははっきりわかりません。ネット上では1,083がクリリンとする意見が多いように感じますが、確固たる根拠があるわけではなさそうです。
ですので、断定は避けるとしてこの時点のクリリンの平常時戦闘力は981もしくは1,083あるとします。
そうすると、前述の1,770との差があることが分かります。
クリリンは拡散エネルギーはで複数体の栽培マンを一蹴していますので、1,770は拡散エネルギー波を出した時の戦闘力と考えれば、辻褄は合いますね。
1,480とされているヤムチャも栽培マンの自爆により命を落としてしまうものの戦い自体では栽培マンよりも優勢であることは明らかでした。
とはいえ、ヤムチャは1,200の栽培マン戦闘力を持つ栽培マンを天津飯のように圧勝というわけでもなく、クリリンのようにかめはめ波でも完全に倒すことができなかったことを考えると、1,470というのはあくまでもかめはめ波を撃った時の瞬間的なものと考えた方がよさそうな気がしますね。
天津飯の1,770もどうとらえるべきか難しいですね。
前述のようにヤムチャと違って、栽培マンに圧勝しています。ベジータの見立てでは天津飯と戦った栽培マンはなめてかかっていたとのことですが、仮に最初から本気を出していたとしても、戦況は大きくは変わらなかったでしょう。それくらい実力差があるように見られました。
それであれば、1,200の栽培マンに対して1,740は妥当ともいえる数字です。
しかし天津飯には気功砲があります。結果的にナッパには通用しませんでしたが、ナッパをびっくりさせて、プロテクターも破壊していました。
命を引き換えにかめはめ波の数段上の破壊力を持つ気功砲が1,740は少なすぎる気もしますので、これは気功砲なしの天津飯の最大戦闘力と考えてよいと思います。
最後に餃子とヤジロベーですが、二人はともに1,000以下の戦闘力となっています。
二人とも実質的な戦闘描写がないため、正直数字の妥当性を検証するのは難しいですね。
クリリンの平常時戦闘力が981もしくは1,083なのであれば、まあ妥当と言えなくもないといったところでしょうか。
神様、ピッコロ大魔王、ミスターポポ、桃白白の戦闘力
さて、次は神様、ピッコロ大魔王、ミスターポポ、桃白白の戦闘力を見ていきましょう。
なぜこのキャラクターたちの戦闘力をまとめて検証するかというと、ここがこのジャンプの付録の戦闘力設定の最もおかしな箇所だからです。
まず、神様220、ピッコロ大魔王260とされていますが、この時点で原作の描写と食い違いがあることが分かると思います。
原作ではピッコロ大魔王に勝った当時の悟空が神様にデコピン一発ではじき返される描写から相対的に神様の方が強いことが明確に描かれています。
またミスターポポはなんと1,030だそうです。神様よりもはるかに強いことになっています。
これはおそらくラディッツ戦に向けてクリリンたちに修行をつけていた関係上、同レベルの戦闘力を持っていないとおかしいと考えての設定なのかもしれません。もしくは、クリリンたちとの修業の過程でミスターポポ自身も強くなったと無理やり考えることもできるかもしれません。
しかし、少なくとも悟空と初めて会った時点で、ミスターポポは自分よりも神様の方が強いとはっきりと言っていましたので、原作の描写には根拠がない数字設定であることは間違いありません。
極めつけは桃白白の戦闘力です。なんと210となっています。
神様と10しか違わないという、これまたありえない戦闘力設定です。
ジャンプ編集者はなにを根拠にこれらの数字を設定したのでしょうか?
コメント
ラディッツについてですが、一発目の魔貫光殺砲の時点で「まともに食らったらアウトだった」と言っていたので、悟飯の頭突きによるダメージに関係なく当たれば倒せていたと思われます。