このブログでは主にオリジナルドラゴンボールの原作をテーマにしているため、アニメやドラゴンボール超などの派生作品は扱わない予定でしたが、ドラゴンボール超が6月に映画公開されるといういう事もありますので、気になっていることをいくつか記事にしていきたいと思います。
このブログでは原作基準で考察をしているため、アニメやドラゴンボール超に対してはアンチ的な立ち位置だと思われているかもしれませんが、決してそんなことはなくアニメもドラゴンボール超も一通り見ています。
ただアニメやドラゴンボール超は様々な大人の事情なども重なり、原作とは設定が変わってしまったり、原作との整合性、辻褄が合わなくなってしまっていることも多いです。
そのため、完全に別物のパラレルワールド的な作品としてとらえ、特に考察においてはごっちゃにすることなく、考える必要があると思っているというだけですね。
さて前置きが長くなってしまいましたが、今回のテーマはずばり悟空の実の父親バーダックです。
ドラゴンボール超の最新刊18巻が4月4日発売されましたので、もちろん私も読んでいます。
この18巻ではバーダックが重要人物としてクローズアップされています。
映画ブロリーでもバーダックは出てきていますが、今回はかなり掘り下げられた描写がされています。
そして私のようなドラゴンボールをオリジナルの原作の頃からリアルタイムで観てきた世代の人たちの中には「バーダックってこんな性格だっけ?」と違和感のようなものを感じる方が多いんじゃないでしょうか?
バーダックとは
ドラゴンボール超で取り上げられたことで、悟空の父親として広く知られるようになったバーダックですが、原作には一瞬でしか出てきません。
というより、実はバーダックは原作が初出のキャラクターではないんですよね。
バーダックが最初に登場したのは、アニメスペシャルで放映された「ドラゴンボールZ たったひとりの最終決戦」で、そのクオリティが非常に高かったため、原作に逆輸入されフリーザと悟空の戦闘中にフリーザの回想シーンで登場することになりました。
(このあたりの事情については下記の記事でも取り上げていますので、是非ご一読ください。)
そのため、そもそも原作に登場しないキャラクターなのだから、原作とは違うという話は筋違いですし、「バーダックってこんな性格だっけ?」というのも的外れな意見かもしれません。
ですが、オリジナル原作のドラゴンボールをリアルタイムで読んできた世代にとっては、バーダックのキャラクターに対しては、このアニメスペシャルのバーダックが印象に残っているのも事実です。
そこでこのアニメスペシャルのオリジナルのバーダックとドラゴンボール超で描かれているバーダックを比較しながら、なぜバーダックの性格が変わってしまったのかという点にまで踏み込んで分析してみたいと思います。
アニメスペシャルのバーダックの性格
アニメスペシャルで描かれたバーダックはフリーザの手下として数々の惑星を侵略しては現地宇宙人を滅ぼしていました。
また、悟空の父親でありながらバーダックは生まれたばかりの息子カカロット(悟空)にも興味を示そうとしません。
まさに戦闘民族サイヤ人の残忍さを体現するキャラクターとして描かれていました。
しかし、そんな悪役的な描かれ方をしている本作のバーダックですが、今なお人気を保っています。
それは彼が単なら悪役ではなくベジータと同じように、サイヤ人の誇りを持っていることや、サイヤ人同士の仲間意識を見せたりと人間的な魅力も同時に描かれていたからだと思います。
このあたりは、ナッパをあっさりと殺してしまったベジータとは違いますね。
物語はバーダックたち5人のサイヤ人がカナッサ星を侵略しているシーンから始まります。
大猿化の能力も使って一夜にしてカナッサ星を攻め滅ぼしてしまったようです。
この時にバーダックは仲間たちから子どもが生まれたばかりだという事をからかわれますが、彼には息子の誕生に全く興味がないようです。
しかし、サイヤ人の仲間たちは「息子の誕生祝い」などとバーダックをかかっていることから、サイヤ人全員がバーダックのように家族に対して興味がないというわけではないようですね。
そんな仲間たちとの談笑のさなか、バーダックはカナッサ星人の生き残りのトオロによって不意打ちをくらい、気絶をしてしまう事になります。
トオロはその後すぐにバーダックの仲間によって殺されますが、彼は「お前に未来を予知できる幻の拳を放った。未来を見てせいぜい苦しむがいい」というセリフを残しながら死んでいきます。
その後、トオロによって攻撃を受けたバーダックを気遣った仲間たちが彼抜きで、他の星を攻めに行くところから物語は大きく急転していきます。
バーダックは後から仲間たちを追いかけていきますが、トーマらバーダックの仲間たちはフリーザの側近のドドリアをはじめとしたフリーザ軍によって殺されていました。
どうやら、この時点でフリーザはサイヤ人を絶滅させる計画を実行に移す決断をしたようです。
バーダックは仲間たちが攻めにいった星についてすぐに虫の息となっているトーマを発見します。トーマはバーダックに、フリーザの命令で自分たちがやられたこと、フリーザがサイヤ人を滅ぼすつもりだという事を伝えます。
しかし、バーダック自身もドドリアの攻撃でやられてしまいます。
ドドリアの戦闘力は21,000~22,000くらいと言われていますから、バーダックたちサイヤ人がかなう相手じゃありません。
余談ですが、バーダックの戦闘力は10,000と言われています。この戦闘力は正直高すぎる気がしますね。バーダックは下級戦士のはずですが、10,000といったらエリート戦士のナッパより上です。
悟空の父親というポジションから設定の整合性を無視して、盛られた感がありますね。
ドドリアの攻撃で大ダメージを受けたもののかろうじて生きていたバーダックは、惑星ベジータに戻り、仲間を募ってフリーザへの反逆を試みます。
バーダックは仲間を殺されたこと、これまでフリーザにいいように使われてきて、用済みになったら殺されるという理不尽な仕打ちに対して怒りを露にして訴えます。
しかし、大多数のサイヤ人はフリーザに心酔しきっていて、彼の言葉に耳を貸そうとしません。
フリーザにいいように使われている言っても、サイヤ人自身もフリーザ軍に協力することによって大きな利益を受けているようですから、フリーザが自分たちを滅ぼそうと考えているなんて、にわかには信じられないのかもしれません。
しかし、それを抜きにしてもこのシーンを見る限り、サイヤ人の誇りなんてものを持っているのは、ごく一部の骨のあるサイヤ人だけなのかもしれません。
サイヤ人の仲間たちの助けをえられないと悟ったバーダックはひとりでフリーザに戦いを挑むことを決意します。
この決意がタイトルの「たったひとりの最終決戦 」に込められているんでしょうね。
その時すでにフリーザは惑星ベジータを消滅させるために、すぐそばまで迫っていました。
バーダックは単身フリーザに戦いを仕掛けますが、当然ながらフリーザにかなうわけがありません。
フリーザのデスボールに飲み込まれ、フリーザ軍の兵士ごと惑星ベジータは消滅してしまいます。
意識が消えていく中、未来の映像がフラッシュバックします。これはカナッサ星人トオマの拳による影響でしょう。
バーダックの脳裏に悟空がフリーザと対峙するシーンが過ぎり、明確に言葉として表現されているわけではありませんが、悟空に打倒フリーザを託すという構図になっています。
ドラゴンボール超 映画「ブロリー」のバーダックの描かれ方
ここまでオリジナルのバーダックをみてきて、彼は決してドラゴンボールの主人公である悟空の父親とは思えないような性格だったという事が分かってもらえたと思います。
それでは、ドラゴンボール超でのバーダックはどのような描かれ方をしているのでしょうか?
ドラゴンボール超でバーダックが初めて登場したのは、アニメ映画「ブロリー」です。
その後、とよたろう先生の漫画「ドラゴンボール超」でも、この「ブロリー」編の物語が描かれ、バーダックが登場します。
直近のアニメ、映画という事もありますので、ストーリーについて深く言及はしませんが、「ドラゴンボールZ たったひとりの最終決戦」で描かれていたバーダックからは考えられないような性格に変貌しています。
まず、悟空が地球に送られた経緯が原作の設定から変更されています。
原作の悟空はサイヤ人の規定によって生まれたばかりの戦闘力測定によって、戦士としての価値が低いと判断され、たいした敵のいない地球に送られたことになっています。
「ドラゴンボールZ たったひとりの最終決戦」においても、この設定は踏襲されていました。
ところが、ドラゴンボール超ではなんと、フリーザに対して内心警戒していたバーダックが事前に息子であるカカロット(悟空)をこっそり地球に避難させるという設定に変更されています。
つまり、親心からバーダック自身によって悟空は地球に送られたことになっています。
なんというか、一言でいうと理想の父親像というか、マイルドな設定に変更されていますよね。
映画「ブロリー」がドラゴンボール初期の設定を知らない子どもたちをターゲットにしているからなのか、現在の世間的な風潮を意識してなのかは分かりませんが、主人公の父親がわが子を顧みないニヒルな性格というのはまずいという判断があったのかもしれませんね。
ドラゴンボール超 生残者グラノラ編のバーダックの描かれ方
そして、今現在進行形で描かれているとよたろう先生のドラゴンボール超、生残者グラノラ編にもバーダックが登場します。
コミックスの18巻が出たばかりという事もありますので、ネタバレ回避のために詳細は記載しませんが、ここでもかなりバーダックの設定がマイルドな描かれた方をしていますね。
少なくとも「ドラゴンボールZ たったひとりの最終決戦」のオリジナルで描かれたバーダックだったら、こんな行動はとらないだろうなというものでした。
総括
ただ、最初にも述べた通り、バーダックそのものが元々鳥山先生の原作にはない、アニメスペシャルのオリジナルキャラクターです。
そのため、ドラゴンボール超でアニメスペシャルとは別の描かれ方をしていたからと言って、それ自体は問題ないことですし、リメイクを重ねるうちに初期の頃とキャラクターの性格や設定が変更されるのはドラゴンボールに限らずよくあることです。
とはいえ、ドラゴンボールを初期のころからリアルタイムで接してきた私のような世代には、マイルドに設定変更されたバーダックには違和感を覚えますし、キャラクターとしての魅力も感じないですね。
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