ドラゴンボール 第56話のあらすじ考察「ドラゴンボール争奪戦」

ストーリー
引用元 ドラゴンボール 集英社

前回の其之五十五では、悟空が六星球を手に入れた直後、レッドリボン軍のシルバー大佐にバズーカで筋斗雲を撃ち落とされました。何を聞かれても口を割らない悟空に、シルバーが「レッドリボン軍のシルバー大佐をなめるなよ」とすごんだところで幕が下りています。

今回はその直接の続きです。わずか14ページのなかに、シルバー戦の決着、悟空の新しい移動手段、そしてレッド総帥とブラック補佐の初登場が詰め込まれています。しかも話の舞台は荒野から本部、さらに北の雪原へと3か所も移り変わります。レッドリボン軍編の「世界地図」が一気に広がる回といってよいでしょう。

本記事では、まずあらすじを場面ごとに整理し、そのうえで「なぜ悟空はここまで一方的に勝てたのか」「レッド総帥の第一印象は何を伝えているのか」といった論点を考えていきます。

あらすじ

シルバー大佐はコートを脱ぎ捨て、なおも悟空を問い詰めます。しかし悟空は相手にせず、その場を立ち去ろうとします。するとシルバーは目にも止まらぬ速さで駆け寄り、悟空の荷物袋を奪い取りました。「レーダーはこの中か」と確かめる大佐に、悟空は怒って袋を取り返します。

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このやりとりで、シルバーは目の前の子どもがただ者ではないと気づきます。それでも自信は揺らがず、「5秒で息の根をとめてやる」と宣言して殴りかかりました。

ところが、悟空はパンチを難なくかわし、腹に蹴りを一発。よろめいたシルバーが苦しまぎれに蹴りを返すと、悟空はそれを跳んでよけ、尻尾で顔面を叩いて気絶させてしまいます。悟空は「さあ いこいこ」と、何事もなかったように歩き出しました。

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カプセルから出てきた相棒

問題は移動手段です。筋斗雲を失った悟空は、次のボールまで走っていくのは遠すぎると頭を抱えます。そこで思いついたのが、シルバーたちの家にあるはずのカプセルでした。

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ケースを見つけて1つ投げてみると、中から出てきたのは1体のロボット。用件を尋ねるロボットに、悟空は遠くまで行ける乗り物がほしいと伝えます。ロボットの勧めで3番のカプセルを開けると、今度は飛行機が現れました。悟空には操縦できませんが、ロボットが操縦を買って出て、2人は空へ飛び立ちます。

レッドリボン軍本部

場面は変わり、はるか遠くにあるレッドリボン軍本部。眼帯をつけて葉巻をくわえた小柄な男、レッド総帥が、長身の部下ブラック補佐に「ドラゴンボール集めが遅い」と不満をぶつけています。

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そこへ熊の姿をした部下が飛び込んできて、シルバー大佐が追っていたボールに異変が起きたと報告します。管制室のレーダーを見ると、ボールが北のホワイト将軍の担当地域へ向かって動いていました。

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レッドはシルバーを呼び出させます。ボロボロの体で通信に出たシルバーから、相手が自分たちより高性能なレーダーを持ったたった1人の子どもだと聞かされると、レッドは激怒します。「バッカもんっ!!!きさまは死刑だっ!!!!」。

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さらにレッドは、ホワイト将軍に連絡して小僧を始末し、ボールを奪うようブラックに命じます。そのうえで、自分が小さく見えるからそばに立つな、とブラックに言いつけるのでした。

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北の雪原へ

一方、飛行機の中の悟空は、急に寒くなってきたことに気づきます。ところがロボットは、ロボットだから寒さは感じないと平然としたものです。

レーダーを見た悟空が、ボールはちょうど真下だと告げた直後、ロボットが寒さで凍りつき、飛行機は墜落してしまいました。悟空は命こそ助かったものの、雪の中で気を失って倒れています。

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墜落の様子は、近くにあるホワイト将軍の基地の兵士たちに見つかっていました。最上階の司令室にいるセーター姿の男は、機内でロボットしか見つからなかったと聞き、子どもは逃げたと判断して捜索を命じます。

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兵士たちが雪原を探しまわるなか、1人の少女が気を失った悟空を雪の上で引きずっていきます。物語はここで終わります。

「5秒で息の根を」の空振り――シルバー大佐は本当に弱かったのか

この回のシルバーは、宣言どおり「5秒」で勝負をつけられてしまいます。ただし、つけたのは悟空のほうです。皆肉な結末ですが、だからといってシルバーを「ただのかませ犬」と片付けるのは早計かもしれません。

見逃せないのは、悟空の手から荷物をひったくった場面です。天下一武道会で準優勝したばかりの悟空が、一瞬とはいえ反応できなかったのです。コートを脱いで構えたことも含め、大佐としての腕と覚悟は本物だったと考えられます。

要するに、問題はシルバーの弱さではなく、悟空との「桁違い」です。亀仙人のもとで8か月修行し、ギランやナムといった世界トップクラスの武道家と渡り合ってきた悟空にとって、普通の軍人はもう相手にならないのです。レッドリボン軍編の序盤は、武道会で得た強さを読者に実感させる「テストコース」の役割も果たしているといえるでしょう。

もうひとつ興味深いのは、とどめが尻尾だったことです。悟空の尻尾は、武道会のギラン戦で再び生えてきたばかりでした。その尻尾が、旅の最初の戦闘でさっそく「武器」として使われているわけです。

敵のカプセルで旅を続ける――筋斗雲を失った悟空の適応力

筋斗雲の喪失は、悟空にとって足をもがれたに等しい出来事です。ところが悟空は、敵の家にカプセルがあるはずだとすぐに思いつきます。

考えてみれば、これは大きな成長です。ブルマと出会ったばかりの悟空は、車もカプセルも知らない山奥の少年でした。それがいまでは、カプセルの使い方を知っているだけでなく、「どこにありそうか」まで推理できるようになっています。最初の冒険でブルマに連れ回された経験が、ここで生きたともいえるでしょう。

そして、そのブルマの代わりを務めるのがロボットです。悟空には操縦できない飛行機を飛ばし、行き先も一緒に考えてくれる。仲間のいない一人旅に、一時的な「連れ」が加わった形です。

皮肉なのは、そのロボットも飛行機も、もとはレッドリボン軍の備品だったことです。世界最悪の軍隊は、自分たちの装備で、自分たちの敵を次のボールまで送り届けているのです。

レーダーが映す「動くボール」――なぜ本部は悟空の行き先を知れたのか

本部の場面で重要なのは、レッドが「ボールが動いている」ことに気づく仕組みです。レッドリボン軍のレーダーが追いかけているのは、あくまでボールそのものです。つまり悟空は、六星球を袋に入れているかぎり、本部から居場所を把握され続けることになります。

ここで対比されているのが、レーダーの性能差です。シルバーの報告によれば、小僧のレーダーは自軍のものより高性能だといいます。軍が管制室ごと使っている大掛かりな設備を、ブルマが作った手のひらサイズのレーダーが上回っているわけです。

レッドがここまで激怒したのも、この事実を踏まえると納得がいきます。小僧が自軍より優れたレーダーを持っている以上、放っておけばボールを先に集められてしまうかもしれません。悟空は単なる邪魔者ではなく、ドラゴンボールを奇う「ライバル」になったのです。サブタイトルの「争奪戦」という言葉は、まさにこの構図を指していると考えられます。

背の高い部下を遠ざける総帥――初登場に仕掛けられた伏線

世界を震え上がらせる軍隊のトップが、初登場の場面で見せたのは「背の低さ」へのこだわりでした。部下に死刑を言い渡し、子どもの抹殺を命じた直後に、背の高いブラックを自分から遠ざける。冷酷さと小物っぷりが、わずか数コマで同居しています。

このギャグは、ただのおまけではありません。物語の終盤で、レッドがドラゴンボールで叶えたかったのは世界征服ではなく、「背を高くすること」だったと明かされます。それを知ったブラックがレッドを射殺するのです。

つまり「自分のそばに立たせない」というこの一幕は、総帥の真の動機と、ゆくゆく自分を倒す男との関係を、初登場の時点で同時に示していたことになります。鳥山先生がこの時点で結末まで決めていたかはわかりません。ただ、後から読み返すと、これ以上ないほどきれいな伏線になっているのは確かです。

ちなみに、シルバーが「相手は子どもだ」と報告した瞬間に死刑を宣告した点も、考えてみると興味深いところです。「小さい者」に負けたという事実が、背丈を気にする総帥の神経をとりわけ逆なでしたのかもしれません。もちろんこれは筆者の推測ですが、そう読めるだけの余地はありそうです。

寒さを感じないはずのロボットが――雪国という新たな敵

飛行機の場面には、鳥山先生らしい落としがあります。寒さを感じないと言っていたロボットが、寒さで凍って飛行機ごと墜落してしまうのです。「感じない」ことと「平気」なことは別物だった、というわけです。

笑いどころである一方、この墜落は次の舞台の過酷さも伝えています。悟空を待ち受けているのは、ホワイト将軍とその兵士だけではありません。いつもの道着姿でやってきた少年にとって、北の雪原そのものが強敵なのです。小物の敵は5秒で倒せても、寒さには拳が届きません。

そして、気を失った悟空を引きずっていく少女。兵士たちより先に悟空を見つけた彼女が何者なのか、この時点では何も説明されません。わずか1コマの登場で、読者に「次はどうなるのか」と思わせる見事な幕引きといえるでしょう。

おわりに

其之五十六のポイントを整理すると、次の3つになります。

  1. シルバー大佐の完敗は、彼の弱さよりも、武道会を経た悟空と普通の軍人との桁違いを示している
  2. レッドリボン軍のレーダーはボールを追うため、六星球を持つ悟空は本部から動きを把握され、「争奪戦」の当事者になった
  3. レッド総帥の初登場には、背丈へのこだわりという、結末に直結する伏線がすでに仕込まれている

筋斗雲を失っても、悟空は自分の頭で旅を続けました。しかしたどり着いた先は、レッドが「小僧を始末しろ」と命じたホワイト将軍のひざもとです。

次回の其之五十七では、悟空を助けた少女と、雪国の村が抱える事情が明らかになっていきます。寒さに弱い悟空は、この雪原でどう戦うのでしょうか。

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