ドラゴンボール 第55話のあらすじ考察「赤いリボン」

ストーリー
引用元 ドラゴンボール 集英社

第21回天下一武道会は、ジャッキー・チュンこと武天老師の優勝で幕を閉じました。前話の其之五十四「再冒険!!」では、悟空が祖父の形見である四星球を探す旅に出発し、亀仙流での修行の日々にひと区切りがつきました。

今回取り上げる其之五十五「赤いリボン」から、いわゆる「レッドリボン軍編」が幕を開けます。ドラゴンボールを狙う新たな勢力・レッドリボン軍が、原作で初めて姿を現す記念すべき回です。

武道会編の華やかな試合から一転して、舞台は人里離れた山林へと移ります。わずか14ページの中に、新しい敵の輪郭、悟空の旅の厳しさ、そして次の展開へのきっかけが手際よく詰め込まれています。今回も現実的・論理的な視点から、この回をじっくり読み解いていきます。

其之五十五「赤いリボン」のあらすじ

天下一武道会からしばらく経ったころ。悟空は筋斗雲に乗って、木々に覆われた山岳地帯の上を飛んでいました。途中で川に降りて水を飲み、ブルマから受け取ったドラゴンレーダーを確認すると、北東の方角にボールの反応があります。

カプセルハウスの男たち

一方、ある山中にはカプセルハウスが2棟とピックアップトラックが1台。トラックのそばで居眠りしていたカウボーイ風の男を、トレンチコートにマフラー姿の男が起こします。この男こそ、後に「シルバー大佐」と名乗る人物です。

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シルバーは、もう朝8時だと告げて部下を仕事に追い立てます。レッド総帥は一刻も早い発見を望んでおり、ブラウンの部隊はすでに前日に1つ見つけた、というのです。カウボーイとキツネのような顔をした相棒はトラックで出発。彼らが探している「それ」の正体は、ドラゴンボールでした。

悟空との遭遇

カウボーイは茂みをかき分けながら、こんなに広い場所で小さな玉を探すことに不満をこぼします。そこへ筋斗雲に乗った悟空が飛んできて、キツネ顔の男がいち早く気づきます。

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悟空は雲から飛び降り、レーダーを見ながらあたりを見回します。男たちは邪魔をするなら殺すと脅し、カウボーイは拳銃を抜きます。しかし悟空は気にも留めず、2つの岩の間からドラゴンボールを拾い上げます。星は6つ。悟空が探す「じっちゃんの玉」ではなく、六星球でした。

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男たちは、それこそがドラゴンボールだと察します。悟空は逆に、なぜドラゴンボールのことを知っているのかと尋ねます。

撃退、そして筋斗雲の撃墜

カウボーイは銃口を向け、死にたくなければ渡せと迫ります。悟空は、何に使うつもりなのかと聞き返したうえで、舌を出して拒否。力ずくで奪おうとしたカウボーイを蹴り飛ばします。続いてキツネ顔の男が発砲しますが、悟空は弾丸をかわして距離を詰め、腹への一撃と蹴りで同じく彼方へ吹き飛ばしました。

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悟空は六星球を持って筋斗雲で飛び立ちます。ところが、カウボーイから無線で報告を受けたシルバーが、ハウスからバズーカを抱えて飛び出してきます。放たれた弾は直撃し、筋斗雲は散り散りに。悟空自身は無事に着地しましたが、その表情は怒りに染まっています。

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シルバーは、悟空の持つレーダーのことや、なぜドラゴンボールを集めているのかを問いただします。悟空は、筋斗雲をあんな目に遇わせた相手には何も教えないと突っぱねます。そして物語は、レッドリボン軍のシルバー大佐をなめるな、という脅し文句で幕を閉じます。

「世界最悪の軍隊」の意外な初陣――レッドリボン軍はどう登場したのか

原作でレッドリボン軍が初めて登場するのは、まさにこの第55話です。ところが、その初陣は拍子抜けするほど地味です。描かれるのは、カプセルハウス2棟とトラック1台、そして大佐と部下2人だけ。軍隊らしい大部隊も、秘密基地も登場しません。

しかも、トップのレッド総帥はこの回では一度も姿を見せません。シルバーの口から名前が出るだけです。タイトルも「レッドリボン軍」ではなく、「赤いリボン」という控えめなもの。組織の全貌をあえて伏せ、「何やら赤いリボンを掲げた怪しい連中がいる」という程度の印象から入る構成だと考えられます。

ただし、地味な画面の中にも、組織の巨大さをうかがわせる情報はしっかり入っています。

  • 「ブラウンの部隊が前日に1つ見つけた」:シルバー隊とは別に、並行してボールを探す部隊が存在することが分かります。しかもすでに成果を上げています。
  • 「レッド総帥が早くしろと言っている」:現場の大佐が急かされるほど、上層部が成果を強く求めている様子が伝わります。
  • 「大佐」という階級:部下2人を引き連れただけの現場責任者が大佐です。この上にさらに何層もの階級があることを、読者は自然と想像させられます。

つまり、「目の前の敵は小さいが、その背後には世界規模の組織がある」という構図を、ごく短い会話だけで示しているわけです。ちなみに、ここで名前が出たブラウンの部隊は、その後も原作で姿を描かれることはありません。「名前だけの部隊」が存在すること自体が、軍の底知れなさを演出しているともいえます。

引用元 ドラゴンボール 集英社

もうひとつ興味深いのが、アニメとの違いです。アニメ版では、この第55話に当たる内容は第34話「非情のレッドリボン」で描かれます。ただしアニメは原作に追いつきそうになったため、それ以前のオリジナル回でシルバー大佐やピラフ一味を絡め、レッドリボン軍を一足早く登場させています。原作の「いきなり山中に現れる」不気味さは、原作を読んだ人だけが味わえるものだといえるでしょう。

軍隊 vs レーダー1台――なぜ悟空は一瞬でボールを見つけられたのか

この回でもっとも皮肉なのは、探し方の差です。カウボーイは茂みをひとつずつかき分け、広すぎると愚痴をこぼしていました。一方で悟空は、後からやってきてレーダーを確認し、岩の隙間に手を伸ばすだけ。数日がかりの人力捕索と、数秒のピンポイント探索。その対比が、この回の面白さの核心です。

ここで注目したいのが、シルバーが悟空に投げかけた質問です。彼がまず聞いたのは、ボールではなく「レーダー」のことでした。悟空が迷わずボールにたどり着いた場面を、部下から聞いていたのかもしれません。いずれにせよ、彼が一番欲しがったのは、ボール1個よりも「ボールを見つける道具」だったと考えられます。

後の展開では、レッドリボン軍も独自のレーダーを使ってボールの場所を把握していることが描かれます。それでも現場で人海戦術をとっているということは、軍のレーダーは「このあたりにある」と地域を絞る程度の精度だった可能性が高いでしょう。だからこそ、ボールのすぐそばまで案内してくれるブルマのレーダーは、軍にとって嗉から手が出るほど欲しいものだったはずです。

考えてみれば、これはとんでもない構図です。兵士や車両を世界中に投入できる軍事組織よりも、少女だったブルマが作ったレーダー1台のほうが、探索能力では上を行っているのです。カプセルコーポレーションの令嬢という出自を考えれば、技術力の差は納得できるところでしょう。

もうひとつ、悟空の問いかけも見逃せません。悟空は男たちに、なぜドラゴンボールを知っているのかと尋ねています。悟空にとってドラゴンボールは、ブルマたちとの冒険で知った「仲間内の話」だったのでしょう。ピラフ一味に続く第三の勢力、しかも組織的に動く集団がボールを狙っている。その事実に悟空が初めて触れた瞬間だといえます。

筋斗雲撃墜――悟空は何に怒ったのか

筋斗雲は、原作第4話で亀仙人から贈られて以来、悟空の冒険をずっと支えてきた相棒です。その筋斗雲が、バズーカの直撃で消し飛んでしまう。この回最大の衝撃は、間違いなくこの場面でしょう。

興味深いのは、悟空の感情の動き方です。銃を向けられても舌を出し、実際に撃たれても平然とかわしていました。ところが筋斗雲を壊された途端、はっきりと怒りをあらわにします。自分が狙われたことよりも、相棒を傷つけられたことに怒る。悟空にとって筋斗雲は乗り物ではなく、仲間に近い存在だったことがよく分かります。

シルバーの質問を突っぱねる理由も、「敵だから」ではなく「筋斗雲にひどいことをしたから」です。善悪の理屈よりも、もっと素朴な好き嫌いで動く。この幼い正義感こそ、初期の悟空らしさだといえるでしょう。

一方のシルバーは、逃げる子どもを止めるためにバズーカを撃ち込んでいます。相手が子どもでも容赦しない。その冷酷さは、この組織の性格をよく表しています。ただ、その後すぐに質問で情報を引き出そうとしているところを見ると、いきなり殺すよりも、レーダーの情報を優先する合理的な指揮官とも読めます。

筋斗雲を失うことの物語上の意味

筋斗雲がいれば、悟空は世界中どこへでもすぐに飛んでいけます。それでは旅に苦労が生まれず、物語が素通りしてしまいます。次の第56話で悟空は、次のボールまで走るのは遠すぎると悩み、敵のカプセルを拝借することになります。そこから北の雪国、そしてマッスルタワーへと話がつながっていきます。筋斗雲の撃墜は、悟空を「予定外の場所」へ運ぶための仕掛けだったと考えられます。

ちなみに、少し先の話になりますが、筋斗雲はこれで消滅したわけではありません。ジングル村の老人たちから、あの雲は壊れるようなものではないと教えられた悟空が呼ぶと、筋斗雲はちゃんと戻ってきます。ただし、ピッコロ大魔王編でタンバリンに壊されたときは、呼んでも戻りませんでした。この違いには、作中でははっきりした説明がありません。バズーカと魔族の攻撃とでは、破壊の「質」が違ったのかもしれません。

六星球はなぜ持ち帰られたのか――と、細部に潜む小ネタ

悟空の旅の目的は、あくまでじっちゃんの形見である四星球を見つけることです。この回も、拾ったボールが六星球だと分かると、じっちゃんの玉ではないとこぼしています。それなのに悟空は、六星球をその場に置いていきませんでした。

理由は作中で語られていません。ただ、銃で脅してくる男たちに渡してはいけないと、直感的に判断した可能性は十分にあります。悟空は以前の冒険で、悪人がボールを集めると何が起きるかを体験しています。何に使うつもりなのかと男たちに尋ねたのも、その警戒心の表れだったのかもしれません。

いずれにせよ、この六星球を手にしたことで、悟空は「軍が欲しがるもの」を持つ存在になりました。ボールとレーダー。この2つを持っている限り、レッドリボン軍は悟空を放っておけません。たった1個のボールが、後に軍を壊滅させる镺いの幕開けとなったわけです。

もうひとつの楽しみ、細部の小ネタ

この回には、熱心なファンの間で知られる小ネタもいくつかあります。

  • トラックはフォード製:シルバー隊のピックアップトラックは、1953〜55年ごろの第2世代フォードFシリーズだとされています。5ページ目の1コマ目では、荷台の扉に「FORD」の文字がはっきり描かれています。車好きの鳥山先生らしいこだわりです。
  • 「108」が「18」に:4ページ目の1コマ目にある建物の番号が、本来の「108」ではなく「18」と入っている誤植があるそうです。単行本などではページの端で末尾が切れており、はっきり確認できるのは掲載当時のジャンプと2016年の総集編くらいだといいます。
  • 作者コメントは猫の話:この号の鳥山先生のコメントは、猫嫌いのアシスタント・松山さんに内緒で猫を飼っていたのがばれた、というものでした。この猫は、単行本3巻のコメントにも登場する「コゲ」だとされています。
  • 「シルバー将軍」事件:少し先の第63話と第64話のジャンプ掲載時、ホワイト将軍が誤って「シルバー将軍」と書かれてしまいました。鳥山先生は次の話の扉頁でおわびしています。それだけシルバーの印象が作者の中でも強かったのかもしれません。

おわりに

其之五十五「赤いリボン」は、わずか14ページで物語の空気を大きく切り替えた回でした。ポイントを振り返ると、次の3つになります。

  1. レッドリボン軍は、総帥の姿も組織名も伏せたまま、小さな現場部隊として登場した。それでも会話の端々から、世界規模の組織であることが伝わる。
  2. 人海戦術の軍隊と、レーダー1台の少年。この探索能力の差が、軍に悟空を狙わせる理由になった。
  3. 筋斗雲の撃墜は、悟空の怒りを引き出し、さらに旅を予定外の方向へ導く仕掛けになった。

「強い相手との試合」が中心だった武道会編から、「悪の組織との戦い」へ。ここから悟空は、たった一人で世界最悪の軍隊に立ち向かっていくことになります。

次回の其之五十六「ドラゴンボール争奪戦」では、いよいよシルバー大佐が自ら悟空に挑みかかります。筋斗雲を失った悟空は、この後どうやって旅を続けるのでしょうか。

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